dz:ndd:sca
脊髄小脳失調症 SCA
- spinocerebellar ataxia
- SCDは,孤発性:遺伝性が3:2
- SCAの多くは常染色体優性遺伝のトリプレットリピート病(ポリグルタミン病)
- 遺伝性(27%AD,1.8%AR)と孤発性(67%)がある
- 運動失調あるいは痙性対麻痺を主症状とする
- 本邦で頻度が高い遺伝性SCAは,SCA3(MJD),SCA6,DRPLA(歯状核赤核淡蒼球萎縮症),SCA31
- このうちSCA6,SCA31は純粋小脳型
- SCA連番の中での非翻訳リピート病(8-10-31-36)はすべて純粋小脳型だが 36は特殊例
- 本邦では指定難病1)(MSAは別枠扱い)
AD-SCD
- 常染色体優性遺伝の SCD は以下。本邦では SCA3, 6, 31, DRPLA が多い
- SCAは連番で 43 まである
ポリグルタミン病2) | ||||
---|---|---|---|---|
SCA1 | AD | ATXN1 | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
SCA2 | AD | ATXN2 | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
SCA3(MJD) | AD | MJD13) | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
DRPLA | AD | ATN1 atrophin1 | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
SCA6 | AD | CACNA1A | 翻訳領域CAG | 純粋小脳型 |
SCA7 | AD | ATXN7 | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
SCA17 | AD | TBP4) | 翻訳領域CAG | 多系統萎縮型 |
非翻訳リピート病 | ||||
SCA8 | AD | ATXN80S | (CTG)n | 純粋小脳型 |
SCA10 | AD | ATXN10 | (ATTCT)n | 純粋小脳型 |
SCA31 | AD | BEAN | (TGGAA)n | 純粋小脳型 |
SCA36 | AD | NOP56 | (GGCCTG)n | 純粋小脳型 |
- 非翻訳リピート病は SCA8, 10, 31, 36, 脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS),DM1(MyD)
- 繰り返配列によらない静的変異(del や heterozygous mutation)によるものも多数同定されている
- SCA5,14,15など
臨床症候
多系統萎縮型 | |
---|---|
SCA1 | 錐体路障害,パーキンソニズム,眼球運動障害,感覚障害,排尿障害,筋萎縮. MSAのイメージ |
SCA2 | 同上の症候に加え,末梢神経障害合併により腱反射は低下する.L-dopa反応性がある.緩徐衝動性眼球運動(slow saccadic eye movements)をきたす.MRIではMSAに類似した十字サインや中小脳脚 T2WI 高信号を認める |
SCA3 | びっくり眼 bulding eye,外眼筋麻痺 Ophthalmoplegia,錐体路障害,ジストニア,パーキンソン症候,筋萎縮,こむら返り,末梢神経障害,自律神経障害 |
DRPLA | ミオクローヌスてんかん,ヒョレアなど不随意運動,精神発達遅滞,厳格,妄想,父親由来で特に世代間促進が著明 |
純粋小脳型 | |
SCA6 | 分類上は純粋小脳型だが,頭位変換時のめまいや動揺視などの症状を伴う一群があり,病初期より小脳症状に先立って出現することがある.これらの一群では垂直下眼瞼向きの眼振 down beat positioning nystagmus が特徴とされ,他のSCAでは稀な特異的所見. |
SCA36 | 分類上は純粋小脳型で病初期(=50代)はその通りだが,進行期には運動ニューロン障害(球麻痺・四肢萎縮)や前頭側頭型認知症,難聴,神経細胞体障害 neuronopathy をきたす稀な型.本邦から報告された. |
AR-SCD
- SCAR として連番がつけられており, SCAR1〜23まである
- 代表は Friedreich 運動失調症(FRDA)だが本邦ではほぼ報告ない
- 本邦で報告のある代表例は EAOH(アプラタキシン欠損症)と ARSACS
- アプラタキシン欠損症では小児期から小脳委縮が目立つ
FRDA | AR | FXN:frataxin | GAAリピート異常伸長.小脳性運動失調,心部感覚障害,錐体路障害,末梢神経障害⇒腱反射消失,凹み足.糖尿病や心筋症を合併しやすい |
EAOH | AR | APTX:aprataxin | 眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型運動失調症.アテトーゼや精神運動発達地帯をきたす. |
ARSCAS | AR | SACS:sacsn | 小脳性運動失調と痙性対麻痺,凹み足,神経因性膀胱,筋萎縮 |
X-linked SCD
- FXTAS が代表的だが,他にも SCAX1や SCAX5 がある
- FXTAS は FMR1 変異によるもので, 非翻訳領域の CGGリピートが 55〜200回程度
- 50歳以降の男性で振戦・小脳失調で発症,進行期に認知機能障害・パーキンソニズム・自律神経障害を伴う
- 多系統萎縮パターン(MSAに類似)
- MSA同様,中小脳脚高信号をきたす(MCP sign;中小脳脚サイン).
- それ以上に伸長する場合は,脆弱X染色体精神遅滞症候群(FMR1)になり,臨床像が変わる
- X染色体を介して,パーキンソニズムのお爺さんから孫息子に遺伝し,知的障害をきたす
治療法
- 純粋小脳型では,小脳性運動失調に対してもリハビリの効果がある
- 失調症状全般に甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)やTRH誘導体が用いられる
- タルチレリン(®️セレジスト);TRH類縁体が有名
参考文献
dz/ndd/sca.txt · 最終更新: 2024/01/26 by admin