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dz:ndd:als

筋萎縮性側索硬化症 ALS

Tips

  • 強制泣き,笑いにはアミトリプチンを用いる
  • NIV導入時期の目安は,%VC<50 or PaCO2>45mmHg 1)
    • カフアシストは機械的に陽圧と加湿をしたあと瞬時に陰圧に変換する咳嗽誘発装置
  • 家族性ALSは全体の5〜15〜20%程度を占める

疫学

  • 主に中年以降に発症
  • 本邦では10万人年当たり約1~2.5人
  • 性別では男性が女性に比べて1.2~1.3倍で男性にやや多い
  • 中年以降いずれの年齢の人でもかかるが,60~70代が好発

原因

  • 一次運動ニューロン UMN と二次運動ニューロン LMN が選択的かつ進行性に変性・消失していくことで全身の筋力低下をきたす原因不明の疾患群(=症候群とも言える
  • 孤発例の原因は十分解明されていない
    • 神経老化との関連や酸化ストレス,タンパク質の分解障害,ミトコンドリアの機能異常といったさまざまな学説がある
  • 家族性ALSでは20を超える原因遺伝子の変化が見つかっている。
    • 日本人の家族性ALSでは SOD1 遺伝子以上が最多(約2割)
    • そのほかFUSOPTN などがある。
    • 日本で多いのは ALS1(SOD1) で,次に ALS6(FUS/TLS,いずれも AD
    • OPTN optineurin でジストニア
ALS1SOD1AD家族性ALSの20%を占め,本邦では最も多い.下肢からの発症が多く,必ずしも上位運動ニューロン徴候を伴わない
SOD1はCu/Zn SODでありMn SODではない.細胞毒性獲得型の機序であるため,mRNAを破壊する(Gapmar核酸投与投与).
ALS2AlsinAR若年発症,緩徐進行,上位運動ニューロン優位
ALS6FUS/TLSAD家族性ALSの5〜10%を占め,本邦で2番目に多い.30 から 40 代発症と比較的若年発症で,経過は 2 年程度と進行が早く,上位運動ニューロン徴候には乏しい.まれにFTDの表現型をとる
ALS-FTD2C9orf72ADFTDをきたす.全世界的にはこの遺伝子異常が多くを占める

症状

  • 筋力の低下・萎縮による諸症状をきたす
    • 手足のこわばり,嚥下障害,呼吸障害,舌運動障害,構音障害

頚椎症との鑑別

  • 頚椎症では説明できない ALS の症状2)
    • 球麻痺(構音・嚥下障害,舌萎縮)
    • 下顎反射亢進
    • 強制泣き・笑い
    • 頸部屈筋の筋力低下(頚椎症としては上すぎる)
    • 傍脊柱筋の萎縮(胸髄レベルである)
    • 萎縮筋に深部腱反射亢進
    • 短母指外転筋の萎縮(T1障害)

診断基準

Awaji基準

  • 脳幹・頸髄・胸髄・腰髄
  • 4領域のうち3領域において上位・下位運動ニューロン障害の臨床徴候あるいは電気生理学的異常が揃えば definite

治療

  • 補助的治療として NIPPV,気管挿管,PEG造設,コミュニケーションツールの導入など
  • 薬学的治療としてはリルゾール,エダラボンが保険適応であるが効果は限定的
  • リハビリは HALの適応あり
リルゾール 本邦の第 III 相二重盲検試験ではprimary endpoint である一定の病性進展または死亡までの期間について有意差なし.7ヵ国31施設で実施された国際第III相二重盲検試験3)の結果,18ヵ月後 or 試験打切日における生存率は本剤50mg群55.3%,100mg群56.8%,200mg群57.8%,プラセボ群50.4%.本剤の全投与量群を合わせた生存率は56.6%で,プラセボ群 50.4% との間に有意差あり(層別Log-rank検定,両側p=0.048).*添付文書より
FVC 60%未満であれば開始しない
エダラボン ALSFRS-Rを主要評価項目にした検証的試験は当初有意差なし4))であったが,対象者を絞り込んだ 137例の post-hoc 解析(重症度1〜2度,%FVC80以上かつ罹病2年以内を対象)ではエダラボン群の ALSFRS-R score 低下は –5·01 (SE 0·64),プラセボ群 –7·50 (0·66)であった5).この研究が皮切りとなり各国で承認されているが,予後延長効果は疑問視されている.
propensity score match 法を用いたコホート研究では生存期間,挿管人工呼吸までの期間などいずれの評価項目においてもリルゾールにエダラボンを加えるか否かで統計学的に有意差を認めなかった6)
2週間おきに10日間点滴投与.FVC70%以下で終了目安.この点滴に費やす時間に対する cost-benefit が妥当か,適切な shared decision making が必要.
TofersenFDAで accelerated approval. FDA資料.P3では,全ての臨床的アウトカムで有意差なし.Change to week 28 in the ALSFRS-R score was -6.98 with tofersen and -8.14 with placebo (difference, 1.2 points; 95% confidence interval [CI], -3.2 to 5.5; P = 0.97). 平均罹病期間は onset から3ヶ月ぶんプラセボ群の方が長いという下駄を履きつつも上記結果.NfL や CSF中の SOD-1などバイオマーカーの改善のみをもって迅速承認された経緯7)
医療用麻薬 塩酸モルヒネ速放 5mg,オプソ®️ 等.呼吸困難感に.

予後

  • 人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い

病理

  • LMNにおける,赤血球より小さい bunina 小体が有名(画像
    • これ自体は TDP43 染色は染まらない
    • シスタチンC陽性
  • Skein-like inclusions は TDP43染色で染まる
1)
2013年ALS診療ガイドライン
2)
臨床神経 2014;54:1080-1082
3)
リルゾール50mg群237例,100mg群236例,200mg群244例,プラセボ群242例
4)
Degeneration, 15:7-8, 610-617, DOI
5)
The Lancet Neurology. 2017;16:505–12. DOI
6)
Witzel S et al. Safety and Effectiveness of Long-term Intravenous Administration of Edaravone for Treatment of Patients With Amyotrophic Lateral Sclerosis. JAMA Neurol. 2022;79(2):121-130. DOI,PMC 8749709,PMID 35006266
7)
Miller TM et al. Trial of Antisense Oligonucleotide Tofersen for SOD1 ALS. N Engl J Med. 2022;387(12):1099-1110. DOI, PMID36129998
dz/ndd/als.txt · 最終更新: 2023/11/16 by admin

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