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徒手筋力検査 MMT

  • Manual muscle testing;MMT
  • 20世紀初頭にポリオ治療薬の治験のために開発された定量的筋力検査法

評価方法

  • 一般的には以下の分類を用いる1)
  • 筋力低下の評価,神経筋疾患の診察,脊椎脊髄疾患(頚椎症性神経根症 CR頚椎症性脊髄症 CSMなど整形疾患を含む)の診察で必須の手技である
    • 逆にこれらの疾患以外でルーチンで評価をする必要性には乏しい
      • 例:脳卒中急性期にERでMMTを行うなどはナンセンス(barre/Mingazziniで十分)
MMTの定量評価
0筋収縮なし
1瞬間的または痕跡的なわずかな筋収縮を認める
(2-)(重力を除いても可動域の一部の可動域の運動のみ2))
2重力を除けば,全可動域にわたり自力で動かしうる
(2+)(重力に抗して,ROM 1/2未満にわたり自力で動かしうる3))
(3-)(重力に抗して,ROM 1/2以上にわたり自力で動かしうる4))
3重力に抗して,全可動域にわたり自力で動かしうる
4全可動域にわたり重力とある程度の抵抗とに抗して自力で動かしうる
5全可動域にわたり正常筋力(最大抵抗に抗してテスト位置を保持できる)
  • 6段階評価を基本とする.中間評価(2+や3-など)は文献によっても定義が異なり,検者の意見も一定しないため,慣れた検者以外は控えた方が良い.
  • 原則として,まずは Grade 3を超えているかどうかを確認してから検者が力を加える
  • 重力を除いても可動域の一部の運動のみの場合には grade 2-と評価する

頚部 MMT

頚部屈筋群C2-4頸長筋,前斜角筋に加え,胸鎖乳突筋(副神経 XI)も含まれる
  • 胸鎖乳突筋を頭部回旋筋と考えると重力の負荷方法がないが,頭頚部屈筋と考えると重力負荷が可能
    • Hislop は,検者は指2本で力を加えるとしている
  • 臥位で頭部挙上が全くできなくても,左右に回転して可動域の全範囲を動かすことができれば,胸鎖乳突筋としては grade 2と判定される

上半身 MMT

  • ルーチンのスクリーニングでは三角筋,上腕二頭筋,上腕三頭筋,手関節背屈/掌屈のみで可
    • 短母指外転筋(正中N),総指伸筋(橈骨N),第一背側骨間筋(尺骨N)などはそれぞれの末梢神経のメルクマール筋として有用
近位筋
三角筋C5腋窩神経(←後神経束)
大胸筋C5-T1内側胸筋神経,外側胸筋神経.
原則臥位で「前ならえ」の姿勢をとってもらい重力負荷下で行う.
MMT2以下では座位で台上に上肢を乗せて行う.
上腕二頭筋C5,C6筋皮神経(←外側神経束).
前腕は回外位でおこなう点に注意(回内位で行うと腕橈骨筋評価)
上腕三頭筋C6-8橈骨神経(←後側神経束).
遠位筋
手根伸筋群C5-8橈側は橈骨神経(C5-7)
尺側は橈骨神経分枝の後骨間神経(C7-8)
手根屈筋群C6-T1橈側は正中神経(C6,7)
尺側は尺骨神経(C7-T1)
長母指外転筋C7橈骨神経.膝の上に手を中間位で置いて検査.
掌面に平行に母指中手骨を母指側外転してもらい(👍)外側から押さえる
総指伸筋C7,C8後骨間神経(橈骨神経分枝).
DIP,PIPを伸展してもらい,PIPを上から指で押さえる
深指屈筋C8,T1示指・中指は正中神経 C8/T1
中指・小指は尺骨神経 C8/T1.DIP関節で評価する.
虫様筋C8,T1I/II正中神経.III/IV尺骨神経.
掌を上にした状態で2-5指のMP関節を屈曲してもらい,上から押さえる.
短母指外転筋C8<T1正中神経.NCSでよく用いる.
手掌面に対して直角になるように母指を掌側外転してもらい,MP関節部を上から押さえる
掌側骨間筋C8,T1すべて尺骨神経.
DIP/PIP伸展位で指を開いてもらい,指間に検者の指を入れてから挟んでもらう5)
背側骨間筋C8,T1すべて尺骨神経支配.
DIP/PIP伸展位で指を開いてもらい,検者の指で閉じる方向へそれぞれ押していく.
または小指外転筋(C8尺骨)と同時評価で,検者が被検者の示指と小指を握り込む
  • 橈骨神経麻痺(下垂手)で手関節が曲がってしまうと,手指屈筋に力を入れることができないため握力が落ちる
    • しかしMMTで手指屈筋(示指と中指は正中神経,薬指と小指は尺骨神経)を個別に確認すると保たれていることがわかる

下半身 MMT

  • ルーチンのスクリーニングでは腸腰筋,大腿四頭筋,大腿屈筋群,前脛骨筋,下腿三頭筋のみで可
    • 部位診断を詳しく行う際,中殿筋や大臀筋,長母趾伸筋,後脛骨筋(内反)などが参考になる
近位筋
腸腰筋L1-2腰神経叢・大腿神経支配.
正常なら検者が抵抗しきれない程度の強い筋.MMT2の評価は側臥位で行う.
大腿四頭筋L3-4大腿神経支配.
座位では,ベッドの縁に深めに腰掛けてもらい,膝関節を伸展してもらう.
座位では腸骨から起こる2関節筋である大腿直筋の力が入りにくくなる点に注意
中殿筋L4-S1上殿神経支配.側臥位で評価.
股関節内転筋群L4-S1大内転筋,小内転筋,長内転筋,短内転筋,恥骨筋,薄筋など.
側臥位で上方の下肢を25度程度外転位に持ち上げ,下方の下肢を情報につけるように最大収縮を評価する.
大腿屈筋群L5-S2坐骨神経支配.
大腿二頭筋,半腱様筋,半膜様筋.
大腿二頭筋の短頭以外は2関節筋(股関節伸展+膝関節屈曲).
腹臥位が抗重力評価には有効だが,検者の力によっては健康者でもbreakされうる.
大殿筋L5-S2下臀神経支配.腹臥位で膝関節を屈曲した状態とし,股関節を伸展し足を持ち上げてもらい評価.
遠位筋
前脛骨筋L4-5坐骨神経-総腓骨神経-深腓骨神経支配.
足関節を背屈してもらい評価するが,通常は長短腓骨筋も作用する.
これらを除くなら足関節内反位で行うと良い.
腓骨筋短腓骨筋,長腓骨筋いずれも浅腓骨神経.
足関節を外反底屈してもらい抗する.
後脛骨筋L5-S2脛骨神経支配.
座位で足関節を内返底屈してもらい抗する.
長母趾伸筋L5-S1坐骨神経-総腓骨神経-深腓骨神経支配.
母趾を背屈してもらい,検者の母指で押さえて評価する.
LDHによる L5 神経根の障害で傷害されやすい.
下腿三頭筋S1-S2坐骨神経-脛骨深頚支配.
本来は非常に強い抗重力筋.片足で爪先立ちをしてもらう.踵が綺麗に上がれば3以上.
つま先歩きをしてもらうと,左右差が検出しやすい.
不安定な場合は,検者が肩を支えるか,壁に手をついてもらい評価する.
つま先だちができない(MMT2+以下)場合,臥位で評価をする.
  • 下腿三頭筋のGrade3-5の評価は一定していない.
    • Hislop 9th では,完全な踵上げ連続25回を grade 5,完全連続2-24回を grade 4,完全1回を grade 3としているが,高齢では健常者集団でも繰り返し回数が急速に減少することも指摘している.
  • 基本的に足関節は外反背屈系が L5-総腓骨神経系,内反底屈系がS1-脛骨神経系と覚える.
    • cf. 足の裏の感覚も,ほぼ完全に脛骨神経 ⇒ 内/外側足底神経支配.
      • ルーチンで下肢のSCSで足ウラを確認することはあまりないが足根管症候群では重要.

参考

  • Daniels L, Worthingham C: Muscle Testing, 4th ed WB saunders, 1980
  • 岩田誠:神経症候学を学ぶ人のために.医学書院 1994
  • Kendall FP, McCreary KE, Provance PG, Rogers M, Romani W: Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain, 5th ed. Williams & Wilkins, 2005.
  • O'Brien MD: Aids to Examination of the Peripheral Nervous system, 5th ed, Saunders Elsevier, 2010.
  • Hislop HJ, Avers D, Brown M: Daniel and Worthingham's Muscle testing, 9th ed Elsevier, 2014.
1)
日本神経学会公認「標準的な神経診察法改訂版」
2)
Daniels 3rd-5th,Hislop 9th
3) , 4)
Daniels 3rd-5th
5)
細かい評価では,たとえば被検者の示指と中指の間に検者の示指と中指を入れ,被検者に手指の内転をしてもらい,検者は手指を外転して力比べを行う方法もある.順次行えば,全ての掌側骨間筋を個別に評価できる(全て尺骨神経支配)
pe/ne/mmt.txt · 最終更新: 2022/12/11 by admin

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