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Fabry 病
病因
- GLA(α–ガラクトシダーゼA遺伝子)変異により発症
- α–ガラクトシダーゼA酵素の活性低下により,糖脂質GL–3(グロボトリアオシルセラミド)1)が蓄積
- 遺伝形式はX染色体連鎖形式 2)
- 男性はX染色体が1つであるため,変異があると患者になる(ヘミ接合体)
- 女性でも2つのX染色体のうち一方のみが変異していても,86%で発症し治療対象(ヘテロ接合体)
- lyonization現象のため,必ずしも軽症ではない3)
Pompe病のαグルコシダーゼと似ているが,Pompeはグリコーゲンが筋肉に溜まる「筋疾患」. グリコーゲンが蓄積するのはもっぱら筋であり,全身疾患になることはない. その "グルコ" と関連づけて覚えれば間違えない
症状
- 進行性の多臓器障害をきたす
- 皮膚症状(低汗症,鬱熱,被角血管腫画像) 60-80%
- 末梢神経障害(灼熱的な有痛性)・自律神経障害 / 男性70%,女性50%
- 眼症状(角膜混濁,渦巻き状角膜,網膜血管蛇行,水晶体混濁) / 男性62%,女性50%
- 腎不全(蛋白尿,糸球体硬化症,尿沈渣中の mulberry body画像) / 男性57%,女性37%
- 40-50代で末期腎不全に至ることが多い
- 心不全(肥大型心筋症,MR,AVBなど伝導障害,狭心症)⇐ 死因の約半数 / 男性61%,女性52%
- 脳卒中(特徴的所見はないが,脳底動脈径の拡大は参考になる) / 男女とも 20%程度
- 4.5mm以上の拡大を特に dolichoectasia と呼ぶ
- 肺症状では慢性気管支炎や喘鳴などをきたすことはあるが,間質性肺炎は合併しない
- Niemann-Pick A/B では間質性肺炎をしばしば合併する
- 疼痛発作(通称Fabry疼痛)は激痛で,CBZやGBPで対症療法を行う
- 夏場に発汗ができず体温上昇に苦しむことが多い
診断
- 白血球中 GLA 活性測定(濾紙血検査)
- 男性の場合,活性がなければほぼ確定.活性低下の場合遺伝子検査へ.
- 女性の場合,WBC中のGLA活性が正常でも否定できない4)ため,遺伝子検査が必要.
治療
- 酵素補充療法(Enzyme replacement therapy; ERT)が適応
- 本邦では以下が保険収載
- アガルシダーゼα 点滴静注(リプレガル®︎)
- アガルシダーゼβ 点滴静注(ファブラザイム®︎)
Tips
- 被角血管腫は本症での出現が代表的だが,ガラクトシアリドーシス,フコシドーシス,アスパチルグルコサミン尿症などでも認められる.
参考
- 神経治療学 2019 年 36 巻 3 号 p. 140-144 J-Stage
dz/mbd/fabry.txt · 最終更新: 2022/10/07 by admin