dz:mbd:ald
副腎白質ジストロフィー ALD
- ABCD1遺伝子変異(長腕Xq28),X連鎖性劣性(XR)遺伝
- ただし女性保因者でも一部が副腎脊髄ニューロパチー AMN をきたし痙性対麻痺などに至る
- 症状は副腎不全と中枢神経系の脱髄
- 遺伝子の変異パターンと発症年齢,臨床病型の相関関係は乏しい
- 精神症状,知能障害,視力低下(斜視・皮質性盲,視野狭窄),痙性対麻痺をきたす
- ほとんどの組織や血漿,赤血球膜,白血球で極長鎖脂肪酸(C26:0,C25:0,C24:0)増加を認める
- 白質変化の分布は以下
- 後頭葉白質(⇒視野狭窄・皮質盲),頭頂葉白質の側脳室周辺部,脳梁膨大部が多い
- 活動性の脱髄病変のある部位では,ガドリニウムにより造影効果を認める
- ABRでI〜III波潜時延長,SEPやVEPも異常を認めやすい
- 臨床的に無症状でも,ACTH高値やrapid ACTH試験で低反応を示す
- 成人における鑑別疾患は以下
- 家族性痙性対麻痺,多発性硬化症,精神病,認知症,脊髄小脳変性症,アジソン病,脳腫瘍,悪性リンパ腫,他の白質ジストロフィー
臨床病型
小児大脳型 | 5~10歳に好発し,視力・聴力障害,ADHDや心身症のような精神症状.学業成績低下,痙性歩行.発症後に比較的急速な進行 |
思春期大脳型 | 11~21歳発症.小児大脳型と同様の症状を呈するが,やや緩徐に進行 |
成人大脳型 | 22歳以後の発症.認知症や精神症状で発症.高次機能障害(失語・失行・失認)をきたし,比較的急速に進行する |
AMN1) | 思春期以降の発症.痙性歩行を主症状に発症する.陰萎,排尿障害をきたす.軽度の感覚障害を伴うことがある.AMNの経過中に,半数程度は大脳型に移行するとされる. |
小脳・脳幹型 | 小脳失調、痙性不全麻痺を主症状とする. |
アジソン型 | 2歳以降〜成人期発症.副腎不全が高度の場合,嘔吐,筋力低下,全身倦怠感,体重減少や色素沈着を認める.経過中に神経症状が明らかになる例もある |
女性発症者 | 女性保因者でも一部では加齢とともにAMN様症状を来すことがある |
治療
- Lorenzo's oil(オレイン酸:エルカ酸=4:1)で血中の極長鎖脂肪酸を正常化させられる
- ただし発症した神経症状を抑制する効果には乏しい
- 副腎不全に対してはステロイド補充を行う
- 痙縮には対症療法を行う
- 小児大脳型において発症後早期の造血幹細胞移植により症状の進行の停止報告あり
- 治療法として期待されているが,進行期には改善が期待できない
- 特に3歳から12歳の未発症男児に対しては以下が推奨
- 最低6か月に1回のMRI,神経生理学的検査(視覚誘発電位及び聴性脳幹反応)
- 6か月から1年に1回の神経心理学検査(Wechsler系知能検査他)
- 12歳以降では1年ごとのMRI検査
- いずれかの検査で大脳型の発症が示唆された場合,早急に造血幹細胞移植を検討する
1)
adrenomyeloneuropathy:AMN
dz/mbd/ald.txt · 最終更新: 2022/10/07 by admin