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Wernicke脳症
概要
- ビタミンB1はTCA(クエン酸)回路の補因子であるため,欠乏すると代謝活性のさかんな部位からエネルギーが枯渇し,障害を受ける.
- 視床下部・視床内側,中脳水道周囲,下丘,第4脳室周囲が好発部位
- 上記部位に左右対称性に連続する病変がWernicke脳症の特徴的分布
- 鑑別は脳血管障害(脳底動脈穿通枝 Percheron動脈の閉塞)や,その他の脳炎・脳症
原因
- アルコール依存症のない場合には,原因の特定が重要.
- アルコール以外の原疾患としては,多いものから順に悪性腫瘍(18 %),消化管手術後(17%),妊娠悪阻(12%),飢餓(10%),消化管疾患(8%),AIDS(5%),精神疾患(2.4%) などが報告されている1).
- 炭水化物のみの食事はビタミン B1 欠乏リスクを高める背景として知られており,抑うつによる過度の偏食なども発症原因になりうる
症状
- 古典的3徴(意識障害・眼球運動障害・体幹失調)が揃うことは少ない
- 栄養障害・眼症状・歩行障害・意識障害のうち 2 つを満たせば probable として治療を開始することが推奨されている2)
検査
- Wernicke 脳症の診断に対し,単体で有用性が高い検査所見はない.
- 血中ビタミン B1低値は診断に支持的であるとされるが,特異度は低く,検査できる環境も限られる
- 特徴的な MRI 画像所見(両側対称性の第 3 脳室-中脳周囲 T2WI 高信号)は,感度 53% 程度,特異度93% と報告されており3),MRI が正常であっても除外できない.
- そのため重要なのはリスクと症候に基づいた臨床診断である
治療
- 治療レジメンの比較研究はないため,経験的な治療を行う
- UpToDate推奨4)は以下:
- チアミン 500 mg 1 日 3 回静注の大量補充療法を 2 日間施行後,5 日間 250mg 1日1回
- その後,内服可能であれば複合ビタミン製剤に切り替える.
- 例:ノイロビタン配合錠(オクトチアミン 75mg,リボフラビン 7.5 mg,ピリドキシン 120 mg,シアノコバラミン 0.75 mg合剤)
- 他のビタミン欠乏を合併している可能性がある点を常に念頭に置く
- 経口摂取が十分可能にならない限り,特にビタミンB3欠乏(ペラグラ)は改善しないため注意
- 点滴補充製剤を採用している本邦の医療機関は少ないため,早めに経鼻栄養を開始するのが治療となる
病理
- 乳頭体の壊死,アルコール性の海馬萎縮など
- 脳梁の脱髄像を合併している場合には,Marchiafava-Bignami病の合併を検討する
参考
- 以下のOA論文がよく画像所見についてまとまっている
- Neuroimaging findings in acute Wernicke's encephalopathy: review of the literature. AJR Am J Roentgenol. 2009 Feb;192(2):501-8.DOI
dz/mbd/we.txt · 最終更新: 2022/12/08 by admin