dz:mbd:krabbe
Krabbe 病
概要・定義
- ガラクトセレブロシダーゼ遺伝子 GALC の exon16欠損による常染色体劣性(AR)遺伝性疾患
- グロボイド細胞白質ジストロフィー(globoid-cell leukodystrophy; GLD)ともよばれる
- オリゴデンドログリア(中枢神経線維)とシュワン細胞(末梢神経線維)の脱随性障害を引き起こす
- これにより中枢神経障害と末梢神経障害をきたす
- 成人型では10代〜40代に歩行障害や四肢筋力低下で発症し,脱髄型多発ニューロパチーを呈する.
- 構音障害,失調,認知症,視神経萎縮を伴う.
疫学
- 日本では発生率が低めで出生20万人に1件程度
- 米国では出生10万人に約1回
病因
- 染色体14(14q31)にあるガラクトセレブロシダーゼ遺伝子 GALC の exon16欠損により発症
- 早期停止コドンにつながるフレームシフト突然変異を引き起こす
- ガラクトセレブロシダーゼのおもな基質であるガラクトセレブロシドは蓄積しないが,微量な基質のサイコシンが蓄積する
- これにより細胞障害を引き起こすと考えられている
- ライソゾーム酵素の一つであるガラクトセレブロシダーゼ(GALC)の遺伝子変異により酵素活性が低下しサイコシンの蓄積を生じる.
症状
- 発症年齢で下記のように4つに分類される.
- 乳児型:生後6ヶ月までに哺乳不良,易刺激性や首が座らないなどの症状で発症し,急速に進行し,1歳までに寝たきりとなり,2,3歳で死亡する
- 後期乳児型:生後7ヶ月から3歳で発症し,易刺激性,精神運動発達遅滞,退行を認める
- 若年型:4から8歳で失調,歩行障害,視力障害を認め,緩徐に進行する
- 成人型:9歳以降に精神症状などで発症し,5から10年の経過で歩行障害,認知障害,視力障害などを認め,緩徐に進行
診断
- 画像の特徴はこのOA論文が分かり易い PMC6702867
- 疑診:上記臨床症状に加えて下記の a, b かつ c を認めれば強く疑う
- fで副腎白質ジストロフィーや異染性白質ジストロフィーを否定できればより強く疑う
- 確定診断:d あるいは e を認める 2)
a. 脳MRI | T2強調画像やFLAIR法で白質の高信号域を認め,側脳室後角周囲から広がることが多い.DWIで進行部位の高信号域を認めることもある. |
b. 髄液検査 | 蛋白の著明高値,神経特異エノラーゼ(neuron specific enolase; NSE)高値を認める. |
c. 神経生理検査 | 末梢神経伝導速度は上下肢ともに正常の半分以下になることが多い.成人型では軽度のこともある. 聴性脳幹反応 ABR,視覚誘発電位 VEP で異常を認める. |
d. GALC 活性低下 | リンパ球や培養皮膚線維芽細胞で GALC 活性低下を認める |
e. 遺伝子解析 | GALC遺伝子に変異を認め,一部の表現型の推定が可能. |
f. 除外診断 | 以下を行うことが望ましい. ○ 血中極長鎖脂肪酸(副腎白質ジストロフィーの鑑別) ○ リンパ球中のアリルスルファターゼA(ARSA)活性測定(異染性白質ジストロフィーの鑑別) |
腓腹神経病理
- 腓腹神経病理では有髄線維の髄鞘菲薄化と,多数のシュワン細胞の細胞質内封入体が特徴.
- この封入体は電子顕微鏡ではパイ顆粒(π-granule)として観察される
- 通常老化でも観察されうるが,クラッベ病を含むリピドーシスでは著名に増加する3).
治療
- 発症早期の造血幹細胞移植は有効とされるが,適応は慎重に検討される
- その他は対症療法が中心
- 抗痙攣薬,経管栄養や人工呼吸管理が必要となることがある.
予後
- 病型により様々で,乳児型は2,3歳までに寝たきりとなるが,若年型や成人型は緩徐に進行する
- 遅発性クラッベ病の患者は病気の進行が遅く,生命予後を大きく縮めないこともある
参考
dz/mbd/krabbe.txt · 最終更新: 2022/10/07 by admin