dz:mbd:wilson
ウィルソン病
- ATP7B遺伝子1)変異による,常染色体劣性遺伝(AR)
- 胆汁中への銅排泄障害による先天性銅過剰症
- かわりに尿中銅排泄が増える
- セルロプラスミンは低下する(cf.無セルロプラスミン血症)
- 銅の組織沈着により全身の臓器障害をきたす
- 肝機能障害(移植適応となり,死因としても肝不全は多い)
- 神経症状
- 不随意運動(手指振戦など),姿勢異常,けいれん
- 精神症状
- うつ症状,不安神経症,双極性障害,妄想性障害,統合失調症,ヒステリー
- 腎障害
- 治療ではD-ペニシラミン,トリエンチン,酢酸亜鉛の内服を生涯続ける
- 肝不全となった場合は肝移植の対象
- 早期診断+適切な治療を続けた場合は予後良好
- 本邦では指定難病2)
- 肝障害,神経障害,腎障害のいずれかをきたした場合には医療費助成対象
診断基準
症状 | ||
---|---|---|
Kayser-Fleisher角膜輪 | あり | 2点 |
精神神経症状 | 重症3) | 2点 |
軽症4) | 1点 | |
検査所見 | ||
血清セルロプラスミン | 10mg/dL未満 | 2点 |
10以上20mg/dL未満 | 1点 | |
クームス陰性溶血性貧血 | あり | 1点 |
尿中銅排泄量 | 80µg/日以上 | 2点 |
40以上80µg/d未満 | 1点 | |
肝銅含量 | 250µg/g乾肝重量以上 | 2点 |
50µg/g-250µg/g乾肝重量 | 1点 | |
肝銅含量を測っていない場合 | 肝生検組織で銅染色陽性 | 1点 |
精神神経症状がない場合 | 頭部MRIで銅沈着の所見 | 1点 |
遺伝学的検査 | ||
ATP7B遺伝子の変異 | 両方の染色体 | 4点 |
1つの染色体 | 1点 |
- Definite:上記の点数の合計が4以上,以下の鑑別診断を除外
- Possible:上記の点数の合計が3以上,以下の鑑別診断を除外
肝疾患 | 慢性ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、薬物性肝疾患、自己免疫性肝疾患、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、α1-アンチトリプシン欠乏症等 |
神経疾患 | 不随意運動、姿勢異常やけいれんを呈する疾患 |
精神疾患 | うつ症状、不安神経症、双極性障害、妄想性障害、統合失調症、ヒステリーの症状を呈する疾患 |
Tips:セルロプラスミン
- セルロプラスミンは肝のミクロソームで銅とアポセルロプラスミンから合成される
- 血中または胆汁中に分泌・排泄される
- サイトカインの上昇による合成促進,シアル酸増加による分解亢進がみられる
- 動向はCRPや胆管系酵素に一致し,種々の炎症性疾患や悪性腫瘍,貧血などで上昇する.
- 下がる疾患としては Wilson病の他にネフローゼ症候群,Menkes症候群,蛋白絶対的胃腸症,劇症肝炎,肝硬変
dz/mbd/wilson.txt · 最終更新: 2022/10/07 by admin