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重症筋無力症 MG
Tips
- 発症年齢は,本邦では5歳未満にひとつのピークがあり,欧米にはない特徴
- 抗AchR抗体の陽性率は80%程度とされる
- 胸腺腫合併MG(TAMG)でMuSKが陽性になることは原則ない
- 代わりに心筋障害と関連がある抗横紋筋抗体(Kv1.4,リアノジンなど)を認め易い
- cf.irAEによるMG
疫学
- 本邦人口10万人あたりの 有病率は23.1人
- 男女比は1:1.15で女性にやや多い
- 発症年齢の中央値(IQR)は全体で 59(43-70)
- 近年,高齢化に伴い50歳以上の高齢発症MGが増えている
- 自己免疫の標的分子はニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)が85%,筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)が5-10%.
- LDL受容体関連蛋白4(Lrp4)を標的とする自己抗体の病的意義は未確立
症状
- 本邦の統計では MG 初発症状として最も頻度が高いのは眼瞼下垂であり,72 % を占める.次いで複視が 47 %である.初発時からの球症状は 15 %程度,顔面筋力低下をきたす例は 5.3 % と比較的稀である1).
- 局所性の筋力低下であっても 全身型MG を除外できない(稀に球症状が先行する症例も報告がある)
身体所見
enhanced ptosis
- 眼瞼下垂が両側性か一側性かを判断するための診察法
- 本当は両側性の眼瞼下垂にもかかわらず,一側の眼瞼下垂が強い場合,患者の代償開瞼努力によって,対側は一見下垂がないように見えてしまうことがある.しかし他動的に下垂が強い側の眼瞼を挙上すると,眼瞼努力を緩めるため,対側の眼瞼が下がる.これにより「実は両側眼瞼下垂だった」ということが明らかになることがある.この現象を enhanced ptosis と呼ぶ2)
検査
反復刺激試験 | 通常は刺激頻度 3Hz で10回の電気刺激を行い,減衰率10%以上を有意ととる. ⽪膚温が下がると Waning は出現しにくくなるため注意が必要. |
アイスパック試験 | 冷凍したアイスパックをガーゼなどで包み 2分間眼に押し当てることにより,眼瞼下垂が改善すれば陽性.感度 80~92%、特異度 25~100%3) |
テンシロンテスト | テンシロン®️(エドロホニウム10mg),生理食塩水を投与する前後で眼瞼下垂の改善を前後比較する.副作用の徐脈,下痢に注意.アトロピン1Aを必ず用意して行う. |
肺機能検査 | %FVCは QMGスコアの評価項目の1つにもなっている |
- 減衰率は,第1刺激における複合筋活動電位 CMAP に対する,後続する CMAP のうちの最小振幅の比率で表現する
- 3Hz刺激では4〜5発目でアセチルコリン放出が最低になるため,1発目に対する4〜5発目の比率を減衰率ととることが一般的
- MGでは高頻度刺激で特に有意な所見は認めない (cf.LEMSは60%以上 waxingする)
治療
- 治療目標はMM54)(PSL5mgで生活・仕事に支障がない症状軽微な状態)
- EFT(early fast acting)戦略:初期からIVIgとカルシニューリン阻害薬を導入し早期のステロイド減量を目指す方法5)が2022ガイドライン以降,一般的になりつつある
- ナファゾリン点眼
- 眼瞼下垂のみを呈する例,治療後眼瞼下垂のみが残存する例に対し,ナファゾリン点眼による対症療法は有効である(推奨提示1C)6).アドレナリン作用により散瞳を来し症状を悪化させるため,閉塞隅角緑内障には禁忌
- 血液浄化療法
- IAPP(免疫吸着)で用いるトリプトファン固相化カラムではIgGが除去されるが,サブクラスによりその吸着性能は異なり,IgG4が病因物質である場合には有効性が低くなる ⇒ MuSK抗体陽性例には適応しない
フォローアップ
- 抗体価は患者間での比較では参考にならない(抗体価が高い=重症ではない)が,「個人内での値の変動」はある程度参考になるかもしれない.
- 「臨床症状で判断するため抗体価はフォローしない」という expertもいる.私も医療経済的にはその方が好ましいと考える.
dz/nmd/mg.txt · 最終更新: 2022/12/11 by admin