dz:pns:paraneoplastic_neuropathy
傍腫瘍性ニューロパチー
- 悪性腫瘍は病初期に無症候で経過することが多く,唯一の症状が末梢神経障害である症例が存在する
- この項では傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome; PNS)のうち末梢神経障害についてまとめる.
- 自己免疫性脳炎については ALEで記載
概要
- 悪性腫瘍が末梢神経障害を惹起する機序は 3つ
- 腫瘍による末梢神経幹の圧迫あるいは巻き込み
- 肺尖部パンコースト腫瘍が腕神経叢を巻き込むなど
- 腫瘍細胞の末梢神経実質内への直接浸潤
- ほとんどが悪性リンパ腫などの血液系由来の悪性腫瘍
- 腫瘍の遠隔効果(いわゆる傍腫瘍性ニューロパチー)
- 腫瘍細胞と神経細胞の共通抗原に対し,抗腫瘍免疫反応が交差反応を起こす機序など(仮説)
- 傍腫瘍性感覚性ニューロパチーと傍腫瘍性運動感覚性ニューロパチー がある
- 傍腫瘍性感覚性ニューロパチーは 小細胞肺癌で見られる Hu 抗体陽性例 が最も確立されている
- 傍腫瘍性運動感覚性ニューロパチーは,特定の悪性腫瘍や臨床像が証明されているわけではなくゴミ箱診断的1)
末梢神経障害をきたす抗体
- 肺小細胞癌に関連するものが多い2)
抗 Hu 抗体 | 亜急性感覚性ニューロノパチー(細胞体障害),辺縁系脳炎,ときに自律神経障害,運動感覚性ニューロパチーも | 肺小細胞癌,胸腺腫,神経内分泌腫瘍 |
抗 CV2/CRMP5 抗体 | 亜急性感覚性ニューロノパチー(細胞体障害) 運動感覚性ニューロパチー | 肺小細胞癌,胸腺腫 |
抗 Yo 抗体 | 運動感覚性ニューロパチー,筋炎 | 乳癌,卵巣癌 |
抗 Ri 抗体 | 運動感覚性ニューロパチー オプソクローヌス・ミオクローヌス | 肺小細胞癌,肺非小細胞癌,原発不明癌 |
抗 amphiphysin 抗体 | 亜急性感覚性ニューロノパチー(細胞体障害) 運動感覚性ニューロパチー | 肺腺癌,原発不明癌 |
抗MAG抗体 | 感覚性優位の脱髄性ニューロパチー | 原発性マクログロブリン血症,多発性骨髄腫 |
Hu抗体陽性傍腫瘍性ニューロパチー
- 腫瘍免疫として生成された Hu 抗体が,血液神経関門 BNB のない後根神経節で神経細胞に交差反応する機序が想定
- しばしば腫瘍が顕在化する前からニューロパチーをきたす
- 臨床的な特徴は以下
- 感覚性の運動失調による歩行困難
- 痛みを伴う四肢遠位部のしびれ感
- 筋力低下は通常見られない
- 亜急性に進行することが多い
- シェーグレン症候群としばしば鑑別を要する
末梢神経病理
- 腫瘍細胞の浸潤によるものと,狭義の傍腫瘍性ニューロパチーでは大きく異なる
- 前者は腫瘍細胞の存在が証明されるが,後者では当然ながら生検神経内に腫瘍細胞は認めない
腫瘍細胞の浸潤によるもの
Hu抗体陽性
- 多数のミエリン球が観察される
- 神経細胞体自体が障害されるため,再生クラスターなど神経再生所見は極めて乏しい
- 腓腹神経生検では,炎症細胞はほとんどない
- 剖検例では後根神経節などの近位部にリンパ球浸潤が観察された報告あり
dz/pns/paraneoplastic_neuropathy.txt · 最終更新: 2022/10/04 by admin