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ショック shock
Clinical Pearls
初期対応
大原則
- 初めから人を集めておく
- 「まずABC安定化」というゴールを再確認の上,チームで迅速に対応
- ABC確保後は以下を分業した方が良い
- 病歴を聴取する医師(家族や介護者に根掘り葉掘り聞きにいく)
下記の順で進める
- AB確保:気道と呼吸状態を評価,必要ならエアウェイ挿入+補助換気 or 挿管
- 上記を行いつつOMI(酸素・モニター・2ルート確保)+鼠径採血「ABG+血培」+ECG
- C確保:まず輸液で反応性確認
- 輸液全開(明らかな心原性・閉塞性といった場合以外)
- 反応性がなければ,NAD開始
- NADで保てず待てそうにない心原性はDOB2) 開始
- 高度の流出路狭窄では禁
- ABCが担保できれば原因検索へ
- 治療方針が大きく変わるため,緊張性気胸アナフィラキシーはまず除外する
- 前者なら脱気,後者ならアドレナリン筋注
ショックの分類と対応
1. 循環血漿量減少性ショック
- 出血性ショックや重度の血管内脱水
- とりあえず大量補液する.足りなければ輸血.
1-1. 出血性ショック
- ショックきたすレベルの出血で念頭に置くべきは:
- 腹腔内出血(HCC rapture etc)
- 後腹膜出血(腫瘍破裂, AAA破裂 etc)
- 消化管出血(吐血・下血)
- 骨盤骨折
- 産婦人科的緊急症
- 弛緩出血,過多月経,外妊破裂,卵巣出血
1-2. 極度の血管内脱水
- 基本は病歴(intake不足)+エコー(IVC)で考える
- DKA
- 透析引かれすぎ
- 頻回下痢嘔吐(イレウス含む)
- 膵炎
- 熱傷
- 食思不振(感染症に伴うもの,老衰,担癌 terminal)
2. 血液分布異常性ショック
- 末梢が暖かい!《Distributive shock》
- 基本まず大量補液だが,その後は分類により個別対応が必要
2-1. 敗血症性ショック
- ERで一番遭遇頻度が高く,絶対に押さえるべき代表格
- つまり ERにショック来院している時点で培養各種は必須と考えてよい
- 易感染,皮膚Entry,体内異物のあるPt(足壊疽・褥創・透析・アトピー)は要注意
- 胆道感染と尿路感染はSepsisやseptic shockに至りやすい(GNRが多いため)
- 詳細は別頁:敗血症性ショック
2-2. 炎症性ショック
- 急性膵炎,重症熱傷など.
- 治療: 大量補液.ERで2L目安.
2-3. 毒素性ショック
- 黄色ブドウ球菌による毒素に対する反応で起きるTSS
- 治療は大量補液+CLDM
2-4. アナフィラキシーショック
- 原因不明のショックではアナフィラキシーの可能性を常に念頭に置く
- 膨疹や血管浮腫が出現しないアナフィラキシーも10-20%存在
- アドレナリン 0.3-0.5 mg 筋注(10-20分ごとに反復可)
- βB内服中のPtでは 不応性となることがある
- その場合,グルカゴン 1-2 mg IVも併用.5-10min毎に反復する
- 詳細は別頁:アナフィラキシーショック
2-5. 神経原性ショック
- 脊髄損傷など
- 徐脈傾向の低血圧となる,いわゆる徐脈性ショック
- 補液+必要に応じてアトロピン,Nad,ステロイド
- 脈拍↑を期待してDOBという説も (?)
3. 心原性ショック
3-1. 心原性
- 広範囲のMI(LAD),RCA/LCx梗塞,重症心不全,重症心筋炎など.
- いずれにせよ循環器直を即コール.リークやBNPをまつ必要はない.
- RCA梗塞(下壁梗塞)は迷走神経反射を起こしやすく,比較的徐脈の 徐脈性ショック を来すことがあるほか,下痢嘔吐が顕在化することも 〈Bezold-Jarisch反射〉
- 高齢DM女性の下痢嘔吐(無痛性MI)には要注意.
3-2. 不整脈性
- CAVB,著明なPSVTやAfに伴う血行動態不安定,VT,TdP,VFなど.
- PSVT や Af はまず ATP やベラパミルで介入
- 心室性不整脈は除細動必須
- 徐脈性心不全(+低灌流による腎不全)は,Temporary PM を入れると直ちに尿がドバドバ出て改善することも
3-3. 機械性
- severeな弁膜症,流出路狭窄(重症AS,重症HOCM),Myxoma,AoD
- TTE 3 chamber viewで,左室流出路部分の PW→Vmax 測定
- 中等症以上のAS高齢者+hypovolemia パターンにも注意
4. 閉塞性ショック
4-1. 心タンポナーデ
- 急性の場合は,心嚢水穿刺(循環器コール).
- エコーでは,AoD合併ないかが重要
- 慢性経過で緩除に蓄積し無症候性の場合もあるため,今回の主病態かどうか検討が必要
- 心臓ope歴があれば反応性心嚢水はある(それが収縮性心内膜炎の原因になっていることもあるため絶対大丈夫とはいえない)
4-2. 肺塞栓
- 病歴,Well's Scoreなどを参考にするが基本的に造影CTでなければ除外できない
- 参考所見はいくつか
- 心エコーで右心負荷(TR,短軸D-shape,IVC拡張)
- 下肢エコーで片側下肢浮腫に DVT 所見ないか(Vが潰れない)
- ECGでS1Q3T3
- 診断つき次第,抗凝固が必要
- massive ならすぐ循環器call
4-3. 緊張性気胸
- 頸静脈怒張,気管偏位,皮下気腫,片側呼吸音消失,打診鼓音
- 肺エコーでMModeを当て,sea shoreサインの消失を確認
- ポータブルCXRは気胸の早期除外に有用
- 治療は以下を急いで適応
- 緊急脱気:18G留置針をシリンジで陰圧かけながら鎖骨中線第2-3肋骨上縁に刺す.プシューが聞こえなくなるまで継続
- 緊急ドレナージ:胸腔チューブ…前腋窩線上第4~7肋骨上縁に20Frチェストチューブを挿入.
4-4. 収縮性心膜炎
- 心臓の拡張障害により右心不全(浮腫,うっ血肝,頸静脈怒張)に
- 特異的な検査所見は乏しい。ERでなくても診断は難渋しやすい
- TTEやCTで心嚢水貯留,右心負荷所見など
- 疾患自体まれなので,ほぼPitfallに近い
- 基本的にカテ診断:特徴的なdip-and-plateu所見
- 原因はウイルス感染,心臓手術後,悪性リンパ腫や乳癌RTの副作用,自己免疫疾患,結核や細菌感染,癌,腎不全など.
- 頭の片隅に.
- 治療:おおむね心不全に準ずる.根治的にはOpeで心膜剥離術.
5. 忘れがち 《pitfall》
薬剤性ショック
- 徐脈性ショックをみたらまずはβBの関与を疑う!アトロピン打つ。
- βB,ACE-i,CaCB
- 抗不整脈薬
- 亜硝酸薬
- ジギタリス
- バンコマイシン
- 有機リン,カーバメイト
- バルビツレート系薬剤
急性副腎不全
- 原因不明・難治性ショック,原因不明意識障害の鑑別の1つ.
- ステロイド内服していたり,元々副腎不全や下垂体機能不全がある患者ではカバー必須
- 最低限 ER でヒドロコルチゾン100mg 投与を
- そうでなくとも重症敗血症は時に副腎出血を来す〈Waterhouse-Friderichsen sx.〉.
- 髄膜炎菌,肺炎球菌,A群β溶連菌で有名.特に脾摘後に注.
甲状腺機能異常
- 高体温+頻脈:甲状腺機能亢進症 → 甲状腺クリーゼ
- 低体温+徐脈:甲状腺機能低下症 → 粘液水腫性昏睡.全バイタル低下
- いずれも未治療のものが基礎にあり,感染などを契機に発症
- 原病の治療を行う
コリン作動性クリーゼ
- 縮瞳,唾液ダラダラ,呼吸困難,嘔気嘔吐,下痢,腹痛,発汗,徐脈,血圧低下.
- 有機リン中毒やカーバメート中毒と同様に副交感神経症状↑↑となる.
- ChE阻害薬(排尿障害でジスチグミンか重症筋無力症の対症療法)に注意
病歴
- ABC安定化と初期対応を行いつつ,同時並行で病歴と身体診察を行う
- 下痢嘔吐などsystem review,疼痛部位の確認と,AMPLEの確認
- 薬剤は全部確認。
- 直近の状態を根掘り葉掘り効く。
病歴・症状 | 鑑別 |
---|---|
嘔吐 | MI,胆道系,副腎不全 |
下痢 | 高度脱水,腸炎,甲状腺クリーゼ,副腎不全,TSS,DKA |
胸痛 | 緊張性気胸,PE,MI,AoD,心筋炎,敗血症,肺炎の胸膜痛 |
腹痛 | 下部消化管穿孔・腹膜炎,腹腔内感染 |
突発性 | 詰まる,爆ぜる,捻れる疾患 AMI,AoD,PE,食道静脈瘤破裂,外妊破裂など. |
事前リスク | |
若年女性 | 外妊破裂,卵巣出血,TSS,アナフィラキシー,urosepsis |
担癌患者 | 敗血症,PE,心タンポナーデ 化学療法中(特に血液腫瘍)の腫瘍崩壊症候群 |
血液サラサラ | 消化管出血,副腎出血(Pitfall)→ 急性副腎皮質不全 |
ステロイド長期内服 | 副腎不全,易感染sepsis |
アルコール多飲 | 急性膵炎,食道静脈瘤破裂 |
肝硬変ベース | 食道静脈瘤破裂,HCC破裂,特発性細菌性腹膜炎 |
腎不全ベース | 高K血症,溢水心不全,透析引きすぎ症候群 |
PEのリスク | 肥満,産後,ピル内服,下肢骨折後,長期臥床,ロングフライト後 |
MI後亜急性期 | 心室中隔穿孔,乳頭筋断裂,左室自由壁破裂,VF |
外傷後 | 血気胸,緊張性気胸,脊髄損傷 |
体温 | |
高体温 | Sepsis,甲状腺クリーゼ |
異常低体温 | 重症敗血症,甲状腺機能低下症,副腎不全,薬剤影響 |
身体所見
- 上から順に降りていくと抜け落ちが少ない。
頚部 | チェックポイント |
---|---|
視診 | 頸静脈パンパン → 心原性・閉塞性 |
聴診 | 頚部 stridor → アナフィラキシー |
胸部 | チェックポイント |
視診 | 外傷・皮下気腫 |
聴診 | Wheeze:アナフィラキシー,心原性(心臓喘息) Crackles:肺炎(敗血症性),電撃性肺水腫,心原性(肺水腫) 呼吸音減弱:気胸,大量胸水 呼吸音正常:PE,敗血症性などの可能性は残る |
触診 | 握雪感 → 気胸 |
腹部 | チェックポイント |
聴診 | 腸閉塞らしい音はないか カテコラミンが出ていれば腸蠕動は落ちる点に注 |
触診 | 右季肋部とCVATを確認(敗血症性を念頭) 他の圧痛部位と拍動性腫瘤も確認する |
打診 | tapping pain があれば腹膜炎を疑う |
四肢 | チェックポイント |
視診 | 紫斑:sepsis 特に電撃性紫斑病(髄膜炎菌,肺炎球菌,A群β溶連菌) 両側下腿浮腫:溢水や心原性らしさ↑ 片側下腿浮腫:DVT→PE or 重症皮膚感染 NSTI 想定 ⇒ そのまま鼡径・膝窩にエコーを当ててVが潰れるか確認を |
触診 | まず末梢温を確認 通常血圧が低ければカテコラミン↑↑で冷たいはず 暖かいときは分布異常性ショック(敗血症,炎症性,毒素性など) 四肢動脈も触れる:AoD念頭に 橈骨A,大腿A,足背A |
検査
検査 | 概要 |
---|---|
各種培養 | 血液培養は最初の採血で行い,抗菌薬投与を迅速にする.尿培,痰培も. |
ABG | 最初の採血で行う.早い・かつ情報量が多い. Lacは敗血症の診断基準.Hbの早期確認,酸塩基平衡,酸素化評価も重要. |
ECG | 来院後早期に確認.MI・CAVBはもちろんのことPE,tako も 前胸部誘導の陰性T,V1R波増高,V5-6で深いS波など |
エコー | ショックの鑑別で最も情報量が多い.人手があれば採血・ECGと同時並行で行いたい. |
CXR | ポータブルで早期に. 気胸,肺水腫,心拡大,縦隔拡大,Caサイン(AoD),ナックルサイン(PE) |
採血項目 | 甲状腺機能,BNP,Ddimer,心筋リーク,輸血前検体保存,T&S は入れておく |
エコー
- まずRUSH(PUMP → TANK → PIPE).
- 壁運動低下から心原性,IVC虚脱か緊満かで循環血漿量減少 or 心原性/閉塞性の鑑別がざっくり可能.
- その後,腹腔内や大血管・鼠径Vの観察にうつる.
- なおDVTでPEリスクが高いのは近位型(鼡径~膝窩まで)
- 遠位までの検索はERでは不要(また,そこまで詳細なエコーはERでは困難)