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腰背部痛 back pain

Clinical Pearls

  • Red flags:発熱,体重減少,担癌,免疫不全,結核既往
  • 整形外科的腰背部痛であっても馬尾症候群 CESや神経圧迫所見は否定を
    • 重度の背部痛,鞍部知覚鈍麻,尿・便失禁,性機能障害は CES の Red flags.

 

鑑別と特徴

Common

整形外科的腰背部痛 労作時・運動時に限定した疼痛(安静時ほぼ改善する)というのが「らしい」病歴.
馬尾症候群 CES,切迫する神経所見(神経根を同定できる範囲)がないことを確認.
筋肉痛や急性腰痛症のきっかけらしいエピソードを問診する.
尿管結石 泌尿器科的腰背部痛の典型.脂汗をかいて前傾姿勢で入室する(ちまたではこれを結石様顔貌と呼ぶ).かなり程度の強い痛み+波状痛.結石既往の確認や,AUSを行う(腎だけでなく大動脈も観察).なおCVAT+尿中RBC陽性 は AoDでも起きうる(腎動脈に解離が及べば血尿に至る)ため pitfall として要注意.
腹痛を伴う場合は急性腹症のようにも見えることもある.痛すぎて嘔気を伴うこともある.

 

Must R/O

馬尾症候群 CES 時間経過で不可逆性となる.48時間以内に介入したい.
- 膀胱直腸障害(尿閉/溢流性尿失禁/便失禁)
- 性機能障害
- 下肢感覚障害(神経痛/しびれ/臀部サドル型の知覚障害)
- 下肢運動麻痺
- 肛門トーヌス低下
原疾患としては椎間板ヘルニア,高度腰部脊柱管狭窄症,脊髄/脊椎腫瘍,脊髄硬膜外血腫,細菌感染(化膿性椎間板炎・膿瘍),外傷による脊損など.
細菌感染/膿瘍  腰痛+発熱,腰痛+免疫不全base,が Red flag.
椎体炎/椎間板炎/腎盂腎炎/腸腰筋膿瘍/虫垂炎腸腰筋波及など.
いずれにせよ血培が必要.高齢者+腰痛+発熱は全例血培でよいCVA叩打痛,棘突起叩打痛は1つ1つ確認する.背景に血流感染・感染性心内膜炎 IE があることもある。
腫瘍骨転移
➡切迫神経所見
腰痛+体重減少,腰痛+担癌などが Red flags.
神経所見を伴う場合は,Oncological emergencyとなる.時間帯や医療資源の有無にもよるが,緊急放射線治療を検討すべき.

 

Pitfall

循環器由来 ◆ ACS(特にRCA後壁梗塞),AoD,Ao瘤切迫破裂.
高齢者,血管リスク,突然ないし急性発症の病歴などがあれば,事前確率高.あきらかな外傷episodeがない場合など,TTE,ECG,CXR などを用いて r/o.AoDでも血尿をきたしうる(=腎動脈を噛んだ場合)ため,結石診断時,要注意.
呼吸器由来 ◆ 肺炎(胸膜炎),気胸,肺塞栓
肺塞栓以外は,鑑別として頭にありさえすれば,CXRで否定可能.
肺塞栓は難しいが,病歴+呼吸数+ABG+ECG(S1Q3T3)+TTEなど総合判断.否定目的ならDdimerも一応参考になる.
消化器由来 1. 膵炎,2. 胃十二指腸潰瘍,3. 胆石 4.大腸憩室炎など.
1:心窩部圧痛,飲酒歴,胆石既往,AUSで胆石/胆管拡張/膵腫大.
2:食事との関連,NSAIDs常用,黒色便,頻脈,CXRで穿孔確認.
3:右季肋部痛の確認,AUS.
4:発熱,高齢者.大抵は腹痛を伴う.
泌尿器由来 ◆ 尿管結石,腎盂腎炎,腎梗塞(不整脈base)
尿検査,CVA叩打痛は基本.結石ならKUB,腹部単純CT.
腎盂腎炎は採血でCreや炎症反応の確認まで必要.特に結石性腎盂腎炎.
男性腎盂腎炎疑いなら腹部単純CTで閉塞機転確認を.
女性腎盂腎炎なら通常の上行性感染でOK.
腎梗塞はAf既往など塞栓源素因を確認,LDH単独上昇.
婦人科由来 卵巣茎捻転,異所性妊娠破裂(後腹膜),切迫流産
いずれもAUSである程度の除外は可.

 

病歴・身体所見

病歴 ポイント
Red flags 発熱,体重減少,担癌,免疫不全(長期ステロイドなど),結核既往(カリエス),膀胱直腸障害,臀部サドル麻痺,四肢筋力低下の有無を確認
食事,飲酒 膵炎,胆石などの事前確率を左右する
血管リスク 循環器的背部痛のリスク確認.AMPLE,ルーチンで確認
身体所見 ポイント
視診 帯状疱疹など確認
触診/打診 CVA叩打痛,棘突起叩打痛の確認.動作時増悪の再現を確認.
腹部大動脈瘤破裂では,50-70%で拍動性腫瘤を触れる.
直腸診 排尿排便障害の病歴があれば,確認は必須.サドル部の感覚障害もあわせて確認する.
SLR 神経根症状の確認.L5-S1,坐骨神経痛,しびれの誘発.
SLRテスト=ラセーグ徴候(Se91%,Sp26%).否定には比較的有用.
深部腱反射 脊髄障害,馬尾障害を疑う時には部位診断のために有用.
MMT 脊髄障害,馬尾障害を疑う時には部位診断のために有用.

 

検査

胸腰椎X線 圧迫骨折,椎体間狭小化,すべり,分離など
AUS 腎盂拡大,AAA,AoDの確認のみならず胆石や膵炎などにも使える
TTE r/o AoD,RCA梗塞,PE
CT 救急車で来る様なケースでは骨条件矢状断+上腹部-骨盤撮像など.
採血 肝胆道系酵素,アミラーゼ,リパーゼ,Dダイマーなど適宜
尿検査 尿管結石を当てに行く目的が多いが,尿路感染の確認でも重要.
血培 腰痛+発熱なら基本的に全例考慮してよい.
妊娠反応 妊孕性のある女性で,外妊など鑑別となる時は追加
ECG 血管リスクを鑑みて,RCA梗塞,AoDなど考える際には必須

帰宅説明

  • 高熱,悪寒戦慄,便尿失禁/尿閉,しびれ/筋力低下を伴う腰痛になったら直ちに再診いただく
sx/bp.txt · 最終更新: 2022/09/13 by admin

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