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細菌性髄膜炎 BM
概要
- 脳外科術後感染(LP/VPシャント感染など)を除く市中細菌性髄膜炎では,ほとんど肺炎球菌性
- 肺炎球菌ワクチンの普及により,発症率は年々低下している
- 脾臓摘出後重症感染症(OPSI)として,侵襲性肺炎球菌感染症(5類)の一環で発症しうる
- 自称「胃がんの術後」としか述べない患者の中に脾臓摘出例がいることがあり,注意を要する
- きわめて sick な疾患(2/3で血培陽性となる敗血症)であり,無菌性髄膜炎(特にウイルス性)とは全く臨床像が異なる
検査
- 理想的には,以下の順で診療に当たる
- 最初の採血で血液培養をとる
- CT(頭部含む全身)撮像から戻ってき次第,腰椎穿刺(CT出棟時点で物品用意して待ち構える)
- 腰椎穿刺した瞬間から抗菌薬開始(DEX 10mg,CTRX 2g を落とし始める)
- ここまでに来院から30分程度で進められないのであれば,髄液培養陰性となるリスクを妥協して先に抗菌薬を投与(初めに血液培養を取っているので,この検体から 2/3程度は生える)
- 髄液検査のグラム染色をその場で行い,GPC双球菌であれば ABPC は不要
- 髄液検査の結果を待っている間に余裕があれば,脳MRI検査まで行う
治療
- 髄液検査結果が出るよりも前に,以下の順で投与(empiric therapy)
- 1,2は同時でよい
- デキサメタゾン (DEX) 10 mg (以降 6時間ごと)
- セフトリアキソン(CTRX) 2 g (以降 12時間ごと)
- バンコマイシン (VCM) 1.0-1.5 g (以降 TDM に基づいて追加投与)
- アンピシリン(ABPC) 2 g (以降 4時間ごと,腎機能で要調整)
- ABPCはリステリアカバー目的だが,CTRX でなく MEPMを選択する場合には不要
デキサメタゾンは必要か
- 前向きのエビデンスがあるのは「肺炎球菌性」の髄膜炎のみである点に注
- 理論的背景は以下1)
- 細菌性髄膜炎に対する殺菌的抗菌薬はエンドトキシン,ペプチドグリカンなどの細菌の壁産物の放出を導き,これらがTNFαやIL-1,血小板活性化因子 PAF など炎症性メディエーター産生を惹起.
- 抗菌薬の投与直前に副腎皮質ステロイド薬を導入すると,その抗炎症作用によってTNF-αやIL-1のmRNA転写・プロスタグランジンやPAFの産生を抑制し,結果として血管原性脳浮腫を減少させる可能性がある
予後
- 予後不良因子
- 高齢,中耳炎・ 副鼻腔炎の存在,発疹の欠如
- 入院時の意識障害,120 /分以上の頻脈,
- 起炎菌の血培陽性,赤沈亢進,血小板減少
- 髄液細胞数 1000 /μl 以下(激烈な経過や免疫不全患者で細胞数増多が目立たないことがある)
Tips
- 2週間程度の抗菌薬治療後も頸部痛・腰背部痛などが残存する場合は椎体/椎間板炎を検索する
- OPSIで治療成功した場合,外来で肺炎球菌ワクチン(PCV13 プレベナー®️ ⇒ PCV23ニューモバックス®️),Hibワクチン(アクトヒブ®︎),髄膜炎菌ワクチン(メナクトラ®️)を順次施注
- 脾摘から OPSI 発症までの期間は数週間から数十年までと報告によって様々であるが,感染リスクは終生存在するとされる2).
- 特に莢膜を有する細菌の感染頻度が高く,OPSI の原因菌のうち最多のものは肺炎球菌である.
- OPSI の致死率は50%を超えるとされる.
- 脾臓摘出後に患者教育がうまくできていないと,病識が乏しい場合がある.本邦の脾摘後患者を対象としたアンケート調査でも,実際に肺炎球菌の予防接種を受けていた患者がほとんどいなかったと報告されている3)
dz/id/bm.txt · 最終更新: 2022/12/08 by admin