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コリンエステラーゼ阻害薬 ChEI

代表的な薬剤

  • 本邦において抗認知症薬として承認されている ChEIは以下
  • 半年ほどでADAS-Cogスケールせいぜい 2-3点/70点程度の差しかなく,長期追跡 RCT はほぼない点に留意
  • 副作用による途中中断率も高く,臨床上も要注意
ドネペジル
(アリセプト®︎)
コクランレビュー2018:AD に10 mg/日を 12週,24週,52週の治療を行ったところ,ドネペジル10mg/日の用量で,70点満点のADAS-Cogスケール加重平均-2.9点(95%CI -3.6~-2.2).また多くのRCTは平均年齢70代前半.1)
ガランタミン
(レミニール®︎)
コクランレビュー2006:AD に24 mg/日を6カ月間投与した場合,70点満点の ADAS‐cog スコアが 3.1 減少(95%CI 2.6~3.7,k=4,ITT).試験期間はいずれも短い.2件のMCIの試験からは原因の説明できない死亡率上昇の報告あり2)
リバスチグミン
(イクセロン®︎
リバスタッチ®︎)
コクランレビュー2015:ADにリバスチグミン(1日6~12mg/日を内服 or 1日9.5mg/日を皮膚用パッチ剤の貼付)を26週間投与された患者では,ADAS‐Cog mean difference ‐1.79 (95%CI ‐2.21 to ‐1.37, n = 3232, 6 studies).行動の変化(3件の臨床試験で報告)や介護者への影響(1件の試験で報告)には差がなかった.有害事象はプラセボと比べて2倍多く,途中脱落も多かった.3)

適用

  • 中等度のAlzheimer型認知症 ADにおいて,各薬剤の特徴を考慮し,ChEI の1剤かメマンチンを使用する4)
    • 無効時には他の種類の ChEIを試すか,メマンチン(NMDA受容体拮抗薬)に変更する
    • ChEIの二剤併用は行わない
  • 脳血管性認知症への有効性は,コクランレビュー20215)で評価あり.ADに対するものと同程度のわずかな効果(ADAS-Cog 2点程度)で,日常生活で明らかになるほどではないかもしれないとの結論.
  • アリセプトは本邦において DLB にも市販後調査の条件付きで適応が通っている(2014)が,市販後調査においてもプラセボ優越性を示せず(2022),効果がなければ中止するように添付文書に文言が追加された6)

副作用

  • コリン作動性(=副交感神経刺激性)の副作用に注意
    • digestive symptoms(悪心・嘔吐・下痢), bradycardia, syncope, QT interval prolongation, arrhythmia, and diverse neurologic symptoms
  • 以下の患者は慎重投与
    1. 洞不全症候群,心房内及び房室接合部伝導障害等の心疾患
      • 迷走神経刺激作用により徐脈や不整脈を起こす可能性
    2. 消化性潰瘍の既往歴,NSAIDs内服中
      • 胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性
    3. 気管支喘息又はCOPDの既往歴のある患者
      • 気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性
    4. 錐体外路障害(パーキンソン病様症状)のある患者
      • 線条体のコリン系神経を亢進することで症状誘発〜増悪の可能性

中止による悪化リスク

  • 中止による悪影響についてもコクラン20217)で評価されている
    • ADにおいて特に有害事象なく継続できていた ChEI を中断すると,認知機能に悪影響を与える可能性はあるが,このSR/MAに含まれたRCTはいずれも low/very low certainty.

死亡を減らす??

  • ChEIの使用は,認知症患者における家族の関与の増加とより積極的な介入の代理マーカーである可能性が指摘されている.“ChEI use might be a proxy marker for increased family involvement and more assertive intervention in patients with dementia”
  • 2022年 Neurology 誌において,RCTの SR/MA でもChEI 投与により全死因死亡を減らす可能性が指摘された8).逆説的だが徐脈の副作用がかえって心保護 → 心血管イベント抑制,などの仮説もあるらしい.
    • ただしこの研究は funnel plot 偏っており出版バイアスの影響がある.
    • またこの研究で含まれたどのRCTも死亡はもちろん主要エンドポイントではない.
    • RCTに参加できてる時点でそれなりのADLの可能性.
    • non-RCTもあわせて MA しているが,臨床現場でフレイルの人には普通投与しないであろうし,selection bias はあるだろう.
      • そもそも immortal bias がかかっている可能性もある.
1)
[CD001190] Donepezil for dementia due to Alzheimer's disease. DOI
2)
[CD001747] Galantamine for Alzheimer's disease and mild cognitive impairmentDOI
3)
[CD001191] Rivastigmine for Alzheimer's disease.DOI 注:このレビューの解析データはすべてノバルティス社がスポンサー or 同社の資金提供
4)
認知症ガイドライン2017
5)
[CD013306] Cholinesterase inhibitors for vascular dementia and other vascular cognitive impairments: a network meta‐analysis DOI
7)
[CD009081] Withdrawal or continuation of cholinesterase inhibitors or memantine or both, in people with dementia DOIPubmed
8)
Truong C et al. Effect of Cholinesterase Inhibitors on Mortality in Patients With Dementia: A Systematic Review of Randomized and Nonrandomized Trials. Neurology. 2022 Sep 12;10.1212 DOI, PMID36096687
med/chei.txt · 最終更新: 2023/10/31 by admin

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