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特発性低髄液圧症 SIH
- CSF hypovolemia syndrome(CHS),Spontaneous intracranial hypotension (SIH)
概要
- Duropathiesの一形態として知られている.
- Duropathiesとは,脊柱管内硬膜の欠損・損傷に伴い髄液が硬膜外へ漏出することで,種々の神経症状を呈する疾患群の総称.
- 他に脳表ヘモジデリン沈着症や多髄節性筋萎縮症などが挙げられる1).
症状
- 体位性頻脈症候群 POTSは除外すべき診断
- SIHは多彩な症状を起こし,日常生活に支障をきたす.
- 最も多い症状は頭痛(特発性低頭蓋内圧性頭痛2))であり,97% を占め,その92%は起立性頭痛である.
- ほか悪心嘔吐が54%,頸部痛が43%,聴覚障害が28%,視覚症状が14%程度で生じる.
- 「音程がずれて聞こえる」といった症状も聴覚障害の一種として顕在化しうる.
- 意識レベル低下や運動障害をきたすことは10〜15%と比較的まれ
検査
- 画像検査で硬膜外髄液を同定できる割合は48〜78%程度である3).
- 2021年,脊髄MRIで髄液漏出を同定しえなかったSIHに対して側臥位digital subtraction myelography(DSM)を施行した場合に脳脊髄液静脈瘻が検出されやすいことが報告され,画像検査のオプションが増えている4).
- 画像診断の広がりにより診断見過ごしの減少効果が期待されるが,一方でどこまで詳細な画像検査をすれば否定できるのか,というジレンマも生じている.
脳CT | ときに両側慢性硬膜下血腫を合併する |
脳MRI | FLAIRで全周性硬膜肥厚,小脳扁桃の下垂,brain sagging |
脊髄MRI | 脊椎硬膜嚢を取り巻く高信号強度の縁取り様の異常所見 floating dural sac signを認める.CISS法など thin slice で撮像すると,硬膜欠損部が指摘できることがある. |
脊髄造影検査 | 透視下で行う.髄液流出は遅速となるため検査難度は高い.造影後に脊髄 CT myelographyを行い,造影剤の濃度勾配から瘻孔を同定する.椎体前面に骨棘を認めることがあり,瘻孔形成の原因となりうる. |
治療
- まず補液を試みる
- 症状改善が乏しければ,瘻孔同定部位での自己血硬膜外注入療法 targeted EBP が有用
- 自己血25mL程度を注入する
- しかし初回のEBPが奏功するのは 6 割程度とされておりしばしば2回のEBPsを要する.
- 瘻孔部位を同定することができなければ targeted EBP ではなく lumbar EBPを行うことになる.両者の治療成績を直接比較した試験は存在しない.
予後
- 上記治療後はおおむね無症状にまで改善する
- 治療後のフォローアップに関して十分なコンセンサスは得られていない
- 慢性期にその他のduropathiesを合併することもあるとされるため,長期的なフォローが望ましい.
1)
Kumar N. Beyond superficial siderosis: introducing “duropathies.” Neurology. 2012;78(24):1992-1999. DOI, PMID22689736
3)
D’Antona L et al. Clinical Presentation, Investigation Findings, and Treatment Outcomes of Spontaneous Intracranial Hypotension Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Neurol. 2021;78(3):329-337. DOI, PMC7783594
4)
Carroll IR et al. Neuroimaging for Spontaneous Intracranial Hypotension Turned on Its Side. Neurology. 2021;96(9):415-416. DOI, PMID33472920
dz/spine/sih.txt · 最終更新: 2022/12/08 by admin