内科のメモ帳

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筋病理

  • Type I(遅筋/赤筋)の方が基本的には濃く染色される(NADH,CCO,Oil Red).
    • 酸化酵素活性が高くミトコンドリアや脂質をよく含むため.
  • Type II(速筋/白筋)が濃く染色されるのは ATPase(ルーチンpH9.4)とPAS染色のみ
    • PAS染色はグリコーゲンを染めるため,遅筋は染まらない

筋生検の手順

  1. 局所麻酔薬は筋組織に直接触れさせない(筋変性・壊死を起こす)
  2. 筋組織の一箇所のみ結紮して糸を通して引っ張る
    • 鉛筆の芯の太さ程度(1〜1.5cm)採取する1)
  3. コルク⽚の上にトラガカントゴムを⽤いて垂直に⽴て,コルク⽚ごと凍結する
    • 検体はイソペンタンを冷却(-160度)して直接入れ,30秒で急速凍結する2)

HE 染色

  1. 個々の骨格筋細胞の大きさと形をみる(正常:ほぼ均一で,成人では直径 60〜80μmの角形)
  2. 筋核の極在性をみる(正常:筋細胞膜下に局在し,核数は 0〜3 個)
  3. 骨格筋細胞質の染色性をみる(正常:均一に染色)
  4. 骨格筋細胞内の異常構造物を見る(正常:ない)
筋径の大小不同主に筋原性.骨格筋細胞が形態的に円形化を呈する
肥大線維 hypertrophic fiber主に筋原性.100μm以上で有意と取る.
fiber splitting(肥大しすぎて亀裂が入る)も.
小径化hypotrophy非特異的
群衆萎縮 group atrophy 主に神経原性
小角化線維 small angular fiber 主に神経原性
Pyknotic nuclear clump
鎖状核 chained nuclei
非特異的;神経原性でも筋原性でも
壊死線維・再生線維単核細胞侵入が目立たなければ,壊死性ミオパチ─を示唆
再生線維では好塩基性の胞体,大型内在核となる
単核細胞侵入炎症性ミオパチ─を示唆

Gomori trichrome 変法染色

  • 緑色の染色
  • RRFは HEでも分かることがあるが, Gomoriの方が検出しやすい
  • Rimmed Vacuole は空胞ありそうかどうかはHEでもわかる
    • きちんと縁取られているかは gomoriでなければわかりにくい
赤色ぼろ線維 Ragged-red fiberミトコンドリア病 etc
縁取り空胞 Rimmed vacuole封入体筋炎DMRV眼咽頭型筋ジストロフィー etc
Spheroid body
Cytoplasmic body
神経原性疾患 etc
Nemaline(端っこに糸屑)ネマリンミオパチー etc

ATPase 染色

  • 白と茶色のモザイク状になる染色
  • 骨格筋細胞のタイプ別の染め分けに有用
  • pH9.8(アルカリ性)のルーチン染色では以下(酸性では発色が逆転
    • 白色:Type I fiber (赤筋/遅筋)
    • 茶色:Type II fiber (白筋/速筋):
      • Type II の中でも IIa, IIb, IIc で色が若干違う
  • 骨格筋の種類により Type I / II fiber 比は異なる
    • 筋生検を行う上腕二頭筋や大腿四頭筋では 1:2 でモザイク状配列
  • Predominancy
    • 先天性ミオパチ─では Type I fiber hypotrophy + predominancy(萎縮した白い線維ばかりになる)
    • ALSでは Type II fiber(速筋)優位に group atrophy

NADH-TR 染色

  • 薄い青系の染色(TypeI遅筋が濃く青に染まり,TypeII速筋がうすい水色に染まる)
  1. 筋原線維間網 (intermyofibrillar network) の観察
    • 正常の筋細胞質は均一に染色される = 乱れがない
  2. 筋細胞質の染色性は Type I > Type II (ATPase染色とは濃淡が逆!
  3. 筋疾患/神経原性疾患を問わずに乱れが生じる
    • 疾患特異性はないが,筋疾患では「乱れ」が強い
Target/Targetoid fiber神経原性変化で非特異的
筋細胞の中心が不染セントラルコア病

SDH 染色

  • 見た目はNADH-TR染色に似ているが,より色が薄く若干緑寄り
  • 筋細胞質の染色性は Type I > Type II (NADH-TRと同様)
  • ミトコンドリア特異性が高く,ミトコンドリアミオパチ─の診断に必須
    • SDH濃染線維(GomoriでのRRF同様,筋細胞膜直下に集積しやすい)
    • SSVs3) = MELAS,MERRF(CPEOでは認めない

CCO染色

  • 陰性線維の有無をみる
  • mitochondria電子伝達系 (cytochrome c oxidase) の酵素活性を利用して染色する手法
  • 筋細胞質の染色性は Type I > Type II fiber(色が少し似ているATPase染色と逆)
  • CCO陰性筋細胞の存在は mitochondrial myopathyの診断に必須だが,疾患特異性はない
    • 慢性経過の筋疾患でもみられる

PAS染色

  • 筋細胞内のglycogenやムコ多糖体を染色する
    • グリコーゲンを蓄えるのは TypeII(速筋)である
  • ほぼ同じ色だが,わずかに Type I < Type II 染色
    • 糖原病 (Glycogenesis) の診断に必須
    • 筋疾患としては Pompe病など

Oil red O 染色

  • 細胞質内に蓄積している脂肪滴を染色
  • Type I > Type II 染色性
    • 脂質蓄積ミオパチー (Lipid storage disease) に必須

免疫組織染色

  • 炎症性ミオパチー: MHC class I/II antigens,CD4,8,68 etc
  • 筋ジストロフィー: 関連蛋白
ジストロフィン Dystrophin細胞膜DMD(細胞膜は全く染まらない)
BMD(薄くまだらに細胞膜が染まる)
DMD保因者(細胞膜が染まる/染まらない筋細胞がまだら分布)
サルコグリカン Sarcoglycan細胞膜LGMD2C-F
ジスフェルリン Dysferlin細胞膜三好型,LGMD2B
カベオリン-3 Caveolin-3細胞膜LGMD1C
カルパイン-3 Calpain-3細胞LGMD2A
メロシン Merosin細胞膜/
エメリン Emerin/
1)
西野 一三.筋病理の基本.臨床神経 2011;51:669-676 J-Stage
2)
神経治療 37:278–282,2020 J-STAGE
3)
strongly SDH reactive vessels
path/muscle/index.html.txt · 最終更新: 2022/11/18 by admin

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