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浸透圧
- 浸透圧 osmolity = 溶質の「数」
- 張度 tonicity = 有効浸透圧 effective osmolality
- 浸透圧は電解質などの「溶質の総数」を反映する.
- 溶質のサイズとは無関係.あくまで溶質の「数」が浸透圧を規定する
- 水は細胞内外でこの「溶質濃度」が等しくするよう速やかに移動する
$$\text{溶質} \ 1\ mol\ =\ \text{浸透圧} \ 1\ Osm $$
浸透圧の定義式
- 一般的な血漿浸透圧の定義式(アルコールなど体外要素がない場合)は以下.
- 浸透圧にかかわる分子は主にこれら(Na,糖,BUN)しかない(他は無視できる)
$$\text{血漿浸透圧(mOsm/L)} =2\text{Na} +\frac{\text{Glu(mg/dL)} }{18} +\frac{\text{BUN(mg/dL)} }{2.8}$$
ポイント
- 2 Na というのは Na+ イオンに対する同数の陰イオンの数も反映したもの
- 厳密には 2(Na+K)だが,Kの小さい影響を近似的に無視した式が上記
- Glu(=C6H12O6) の分子量は 180 → 単位を合わせるため,18 で割る
- BUNの分子量は 28 → 単位をわせるため,2.8 で割る
- なお BUN は細胞膜(細胞内・細胞外の隔壁)を自由に移動できるため,有効血漿浸透圧(=張度)として影響力を持つことはない(後述)
- 生理的でない体外要素としては,上記に加えて Mannitol(mM) や Alcohol(mM) など
- このうちマンニトールは血漿張度にも関わるが,アルコールは BUN 同様に細胞膜を自由に通過するため,張度は形成しない(→ 高血糖のとき Na は一時的に移動し低Naにして低張度にしようとするが,血糖異常のないアルコール昏睡では偽性低Naにならない)
正常血漿浸透圧 280 の内訳
- ヒトの血漿浸透圧は,だいたい 285 ± 5 mOsm/L
- ほぼほぼ Na(+K) が規定しているという点は重要
- 正常値として Na=140,血糖 100,BUN 15 を浸透圧の定義式に入れてみるとよく分かる
- 290分 の280 程度は Na(+K)が担っている
- Glu と BUN はせいぜい残りの 10〜15 程度を 6-6 程度で担う
- ほんとにK 無視してええんか?とは思うが実測の血漿浸透圧はこの辺りに収まるので上式で問題にならない
張度
- 細胞膜を自由に通過することができないために「細胞内外に浸透圧較差を生み出すことになる」物質が「張度」(=有効血漿浸透圧)を形成する
- つまり血漿張度は,浸透圧の定義式から自由に細胞内外を行き来するBUNを除いたもの(下式)
血漿張度の定義式
$$\text{血漿張度(mOsm/L)} =2\text{Na} +\frac{\text{Glu(mg/dL)} }{18}$$
- ここで K を加えて 2(Na+K) とする教科書もある
- 血糖値は病的状態を除けば 180 を超えることはほぼなく,せいぜい上式のうち10程度
- つまりここでもやはり上式のうちほとんどを 2Na(=260〜280)が占める
輸液の張度
- 「血漿の張度」は上式で示されるが,「輸液の張度」はそこからさらに Glu の項を除く.
- Gluを血中に入れてもすぐに分解されるため,実質的には Glu は張度形成に関わらない.電解質の溶質量だけで決まる.
$$\text{輸液張度(mOsm/L)} =2(\text{Na+K}) $$
- 血漿浸透圧や血漿の張度においてはKを無視していたが,輸液の張度においては 必ず K を計算する点に注意
- たとえば 3号液などでは「Na35:K20」と K の溶質量が多く,Naと比べても当然無視できない
- 以上から「輸液が等張かどうか」は「(Na+K)値は生体と比べてどうか」という話と同義
- 尿の張度よりも高張度の補液をすれば生体は高Naに傾く
- 尿の張度よりも低張度の補液をすれば生体は低Naに傾く