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点滴治療

  • 点滴本体の選択を考える時,以下の 3つの軸を明確にし,基本事項を抑える
    1. 水分(細胞外液)を入れる
    2. 電解質を調整する
    3. カロリーを入れる

基本事項まとめ

水分(細胞外液)を入れる 電解質を整える カロリーを入れる
張度の概念 Naバランスの原則 浸透圧比の壁
831の法則(等張液 1/4の法則) 基礎代謝で調整
  • 基本的にすべての補液は等浸透圧(280-290 Osmあたり)で調整されている
  • 末梢点滴で覚えなければならないのは5つだけ
    • 生食,リンゲル,1号液,3号液(+ビーフリード®️),5%ブドウ糖液
  • ビーフリード®️ の実例で浸透圧と張度を学ぶ ⇒ そのうえで TPN を学ぶ

1. 水分を入れる

浸透圧・張度

  • 浸透圧張度とは何かをまず理解しておく
    • 補液の選択を考える上で超必須事項

輸液の張度

$$\text{輸液張度(mOsm/L)} =2(\text{Na+K}) $$

  • 上式の詳細は別頁
  • 等張というのは,上記が血漿の張度(2Na+2K+Glu/18)と概ね同じであるということ
    • 低張は血漿張度よりも低い,高張は血漿張度よりも高い
  • カロリー補充を目的としない代表的な点滴製剤は基本的に浸透圧比 1(=約280-290 Osm)に調整されている
    • 生理食塩水(生理とはそういう意味),リンゲル,1号,3号,5%ブドウ糖液
    • 浸透圧比が高くなればなるほど,静脈へのダメージが大きい

831の法則

  • 体重の 60%が水分
  • 循環血漿量 = 血管内「水分量」は体重の 5 %
  • 細胞内:細胞外(間質):細胞外(血管内)= 8:3:1 を覚える(ヤサイと丸暗記)
  • この血管内の水分量が循環血漿量にあたる
    • 体重からの割合としては 40%:15%:5% になる(あわせて 60 %)
    • たとえば体重 60kg であれば,細胞内液が 24L(40%),間質 9L(15%),血管内 3L(5%
      • なお血液のうち 40%が血球で 60% が血漿なので,それらを合わせた「血液量」の重さとしては体重 7〜8%になる。

等張液を補液したとき

  • 等張液は輸液されても細胞外液の張度を変えないため,すべて細胞外に分布する
    • しかし間質:血管内 = 3:1 であるため,血管内には 1/4 しか残らない
    • ただし出血などの病態ではなんやかんや 1/3 くらい残ることが知られている(生体の代償機能により)

5%ブドウ糖液を補液したとき

  • 5%ブドウ糖液は張度0であるため,そのまま細胞内外に広く分布してしまう
    • 8:3:1の法則により,入れた質量の 1/12 しか血管内に残らない
  • ちなみに 5% ブドウ糖液は,1L に 50g = 0.278 mol 入っており等浸透圧であるのに,なぜ張度は0になるのか?
    • これは,実際には「入れた瞬間は等張」だが「点滴製剤の糖は血中に入るやいなやすぐ分解されるので水しか残らない」ことによる.
    • 電解質フリーであるため,張度を形成しない(=通称 自由水というのは ion freeの意).
    • なお「入れた瞬間から浸透圧0,張度0」である蒸留水は点滴できない(=溶血を起こす)

他の低張液を補液したとき

  • 生理食塩水と 5%ブドウ糖液という両極を考えれば,1号液,3号液などの張度はその中間に分布しているため,カクテル的に考えて計算すればよい
  • たとえば1号液は通称「半生食」と呼ばれる様に,だいたい生食のさらに半分程度が血液に残る
    • 1/4しか残らない生食の半分なのだから,1/8程度である

2. 電解質を調整する

  • 点滴本体の選択によって最も大きな影響を受けるのは Naバランス.ここでも張度の概念が重要
  • 逆に Na 以外の電解質は点滴本体云々で調整するものではなく,あくまで混注や他の治療法で調整をすることになる(▼)
低K点滴では入れられる速度や濃度に上限あり.内服の方が早い.
高K点滴本体をKフリーにしておくくらい.本格的な補正はロケルマ®︎,透析による.
低Ca/Mg/P点滴本体が云々ではなく,混注するかしないか
高Ca/Mg/Pとりあえずこれらを含まない点滴本体を多めに入れて薄めるのみ

Naバランスの原則

  • 最低限以下の原則だけ押さえておけばよい
    • 尿張度よりも高い張度の補液をすれば,血中 Na は高くなる
    • 尿張度よりも低い張度の補液をすれば,血中 Na は低くなる
  • 基本的に低張液(=3号液など)を漫然と投与し続ければ 低Na方向になる
    • 入院患者の多くはストレス性に ADH の分泌が増えており元々 低Na方向になりやすい点に注

3.カロリーを入れる

  • 経口摂取/経腸栄養が大原則だが,どうしても難しければ点滴で補う
  • 最低小柄な女性 1400 kcal 〜 男性 1800 kcal 程度を目安とし,基礎代謝を鑑みて調整.
    • 入れ始めは 25~30 kcal/kg/日としておけば大きく外さない

浸透圧比の壁

  • 末梢(PPN)で入れられるのはせいぜいビーフリード(浸透圧比3,420kcal/L)が限界
  • それ以上濃い液体は浸透圧比が高すぎ,静脈炎を起こしてしまうため CV 投与が必要
  • これでも 2L 入れて 840 kcalしか入らない
    • かなり低張液なので,2L入れ続ければ相当低Naに傾けることに注意
    • 脂質やタンパク質,微量元素,ビタミンに乏しい点にも注意
    • ゆえに経腸栄養が大原則ということである

基礎代謝で調整

  • 基礎代謝:覚醒状態の生命活動を維持するために生体で自動的に行われている活動における必要最低限のエネルギー.
  • 15才以上の男性であれば標準体重あたり 27〜22 kcal/kg/日,女性は 25〜20kcal/kg/日.
    • 経年で低下する
    • 標準体重は BMI 22 で計算。
  • 普通の動ける入院患者は 1.3-1.5 倍(傷害係数1.2-3, ベッド外活動1.2),集中治療や重症感染は 1.8倍(傷害係数1.3-1.5×ベッド上安静1.2),寝たきりは 1.0倍くらいしておけばよい。ざっくり。
  • というわけで入れ始めは 25~30 kcal/kg/日としておけば大きく外さない
    • あとはNSTと相談していくのがよい
身長 標準体重25kcal/kg30kcal/kg
150 cm49.51250 1500
155 cm53 1300 1600
160 cm56 1400 1700
165 cm60 1500 1800
170 cm64 1600 1900
175 cm67 1700 2000
180 cm71 1800 2150

エネルギーバランス

  • 脂質のみ 9kcal/g,タンパク質と炭水化物は 4kcal/g
  • 蛋白質必要量は 0.8~2.0g/kg/日
    • また非蛋白熱量(NPC ; non-protein calorie)/窒素(N)比が一般に 150~200 程度になるよう算出
    • 腎不全や透析前の慢性腎不全,非代償性肝障害は 0.6-0.8g/kg/日まで減らす(NPC/N=300-350)
    • 逆に重度熱傷など著明な代謝亢進時には 2.0-4.0g/kg/二値(NPC/N 80-120)
  • 脂質必要量は経腸・経口摂取ではエネルギーの20~30%
    • 静脈栄養の場合は10%くらいで抑える
  • 糖質必要量は上記の蛋白,脂質を除いた部分で算出する

水分量

  • 水分必要量は,通例投与エネルギー量(kcal)と同量(ml)を目安とする
    • あるいは(体重kg)×30~35(ml)あたりが目安
    • 心不全・腎不全・肝不全などはもちろんその限りではない
    • 食事からの水分も含むが,経腸栄養剤のうちの水分量は結構幅がある
      • 60%程度の場合,たとえば400mL×3(1.5kcalの製剤なら1800kcal)入れても水分は 720mL程度にしかならない
      • 残りの必要分は白湯で補う必要がある
anp/div.txt · 最終更新: 2023/01/22 by admin

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