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筋電図 EMG

  • 典型画像は 神経治療 35:243–246, 2018 J-Stage が詳しい
  • 正常の運動単位の持続時間は 5-15msec 程度
  • 前角細胞は最低 4-5Hz,最大 25-50Hz,瞬間最大 100Hz 以上で発火する能力がある
筋電図はハンマーの延長 ── by 園生雅弘


安静時所見

正常所見
voluntary MUP 安静時とは言え大抵の場合すこし残ってしまう.上向き(陰性)の波.拮抗筋活動を促すことで消失する(Bicepsの検査中に,Tricepsに力を入れてもらうなど).これを Fib と間違えないことが極めて重要. regular でなく,若干のバラツキがある. semiregular .その点で Fib とは鑑別が可能. ラスター記録にするとわかる.慣れれば音でも違いがわかる.
終板電位 end-plate spike/potential. ちょっと針を動かした時に,バァ──っと不規則で高振幅な波形を認める.少し動かすだけで消える.形は単一で,単神経線維を示す.NMJにたまたま針先が当たると,アセチルコリンが大量に出て筋線維が不規則に大量発火する.放っておけば消える.正常所見.
微小終板電位 end-plate noise. 貝殻の音 sea shell murmur. end-plate spike になる前の所見.
異常所見
ミオトニー放電 myotonic discharge.急降下爆撃音,エンジンサウンド.臨床的なミオトニアを伴う疾患でなくとも陽性になりうる.たとえば多発性筋炎や高K性周期性四肢麻痺でも陽性になる. 1)
陽性鋭波 PSW regularにタッタッタッタッタッタと音が聞こえながら下向き(陽性)の波を認める.
acute denervation 所見とされるが,筋線維断裂を伴う筋疾患でも認める.原則一本の筋繊維はひとつの NMJ しか持たないため,断裂した筋線維の一方は必ず脱神経となる.IBMなどが好例。
線維自発電位 Fib PSW と同じ意味をもつ所見.主に脱神経筋や筋線維断裂を伴う様な筋疾患で認める.発火頻度では 5-10 Hz 程度が多いが,最高で50Hz程度まである.PSWと同様に regular firing であることが重要. 掃引画面では,ゆらぎのない「一直線に並ぶ」電位が特徴的.
線維束性電位 Fas Fasciculation potentials. かなり不規則で,低頻度に認める.振幅は大きい.出る時は群集的に(クラスター的に)ババっと出る.他の神経原性疾患と比べても,特にALSで認め易い.
複合反復電位 CRD complex repetitivev discharge.ヘリコプターサウンド,マシンガンサウンドと呼ばれる. 複雑な一連の波形がずっと繰り返す.疾患特異性はないが,ALSではよく認める.
ミオキミー放電 myokimic discharge.臨床症状としてのミオキミアを筋電図で拾ったもの.放射線神経障害,Issacs症候群,ヘビ毒,金製剤などで認める
  • このうち筋線維由来電位は Fib,PSW,Myotonic discharge,CRD
  • このうち神経末端起源電位は Fas,Myokymic potential,End plate noise

随意収縮 voluntary

衛星電位軽収縮時などで,主要なMUPから一定の間隔で認める単一筋線維放電.初期陰性波
神経原性を示唆する所見 筋原性を示唆する所見
late, reduced recruitment normal 〜 early recruitment
通常は 11 Hz を超えて単独 MUP が発火し続けることはない.伝導する軸索数が減少しており少ない MUP で発火頻度をあげて筋力を出力しようとしている証左となる.単一ないしごく少数のMUPの高頻度発火(= reduced recruitment).最も信頼性の高い神経原性の所見. 個々の運動単位 MU に属する筋線維数が減少しているため,弱い収縮の段階から多数の MU を動員して筋力を出力する必要があるために起きる現象.
実際には特定の Hz などの基準があるわけではなく,検者の主観が入りやすい.確実な脱力筋においても reduced recruitment になっていないことや,干渉が保たれていること(near complete interference)のほうが客観性があり重要な所見.
high Amp, long duration(thick) MUPs low Amp, short duration(thin) MUPs
いわゆる giant MUPs. 神経再支配所見とされる.MUPが大きければ大きいほど(20mVを超えるなどの場合),また polyphasic であると慢性経過らしい所見.神経再支配が完成していない段階では unstable, polyphasic MUPs2) を認める.ただし,high〜giant Amp に見えることはミオパチ─でもよくあり,鑑別に必ずしも有用ではない. 典型的な筋疾患.MUPはたくさん出ているが,いずれも小さく,持続が短く,多相性 polypahsic。最大収縮時には干渉波形が見られる(near complete interference) .とはいえ実際には Ampは保たれることもある.重要なのは recruitment の方.この点は間違いやすいと言われるIBMとALSの鑑別でも重要.

Recruitment 動員

  • 随意収縮時,力を加えていくと,発火閾値が低いものから順にMUPが動員されていく
    • 9Hz(平均7.5Hz)程度までは最も発火閾値が低い単一MUPのみ動員される
    • そこから徐々に動員される MUP が増えていく
    • 最終的に最大収縮では 30-50 Hz になるが,その際には相当たくさんの MUPs が動員され干渉波形となる
  • reduced recruitment の目安は
    • 「単一MUPが 15Hz以上で発火」 または
    • 「20Hz以上で発火するMUPが認識できること」
      • とはいえ幅はあるが, 40Hz 単一MUPなどがあれば確実な神経原性

参考

  • 神経内科 臨床神経性理学的検査マニュアル2006 July vol.65 supl.4
1)
20Hz以上などの速いFib様所見をかつては pseudo myotonic などと評していたが,現在は myotonic discharge と本質的に鑑別不能であり myotonic discharge と呼べばよいということになっている(要出典)
2)
毎回波形がバラバラ少しずつかわる
ce/emg/index.html.txt · 最終更新: 2022/10/10 by admin

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