目次
封入体筋炎 IBM
症状
病理所見
除外すべき疾患
封入体筋炎 IBM
深指屈筋や長母指屈筋の障害により指の巧緻運動障害を呈する
ペットボトルの蓋の開閉困難,ゴルフクラブを握れないなど
大腿四頭筋と比べ,腸腰筋や大殿筋は障害されにくい
大腿直筋の障害が他の大腿四頭筋に比較して障害されにくい
非対称性の筋力低下を起こしうる(左右差のある筋疾患といえば IBM か
FSHD
)
HCV,HTLV-1,HIV
との関連が示唆されている
cf. HIVは
ネマリンミオパチー
が特に有名
嚥下障害はよく認めるが,基本的に
呼吸障害はきたさない
筋痛はまれ
認知機能低下は一般には認めない
VCP
遺伝子異常が近年トピック(以下の疾患を呈する)
家族性ALS
骨 Paget 病および前頭側頭型認知症を伴う封入体ミオパチー(IBMPFD),
常染色体優性遺伝性(AD)
症状
臨床的特徴
他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(特に深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下・筋萎縮
筋力低下は数か月以上の経過で緩徐に進行する
多くは発症後5年前後で日常生活に支障を
数週間で歩行不能などの急性の経過はとらない
発症年齢は40歳以上
安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを越えない
参考所見
嚥下障害が見られる
針筋電図では筋原性変化:early recruitmentを認める
線維自発電位,陽性鋭波,複合反復放電も認める
高振幅長持続時間多相性の神経原性を思わせる運動単位電位
が高頻度に見られるため注意
病理所見
縁取り空砲に伴う変性+炎症細胞浸潤
の
2軸の要素
で考える
筋内鞘への単核球浸潤を伴い,以下の所見を認める
縁取り空胞を伴う筋線維
非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲(
多発筋炎 PM
と同様)
以下は参考所見
筋線維の壊死・再生
免疫染色が可能なら非壊死線維への単核細胞浸潤は主に
CD8陽性キラーT細胞
形態学的に正常な筋線維におけるMHC class I発現
筋線維内の
ユビキチン陽性封入体とアミロイド沈着
COX染色陰性の筋線維:年齢に比して高頻度
電子顕微鏡にて,核や細胞質における16~20nmのフィラメント状封入体の存在
筋線維内に p62陽性の凝集体
を認める
除外すべき疾患
縁取り空胞を伴う筋疾患
眼咽頭型筋ジストロフィー OPMD
,
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー
,
BMD
も時に縁取り空砲が出現しうる
炎症性筋疾患
多発筋炎 PM
,
皮膚筋炎 DM
筋萎縮性側索硬化症
初期にはCK高値となるALSもあり,筋電図所見も紛らわしいことがある