目次

筋病理

筋生検の手順

  1. 局所麻酔薬は筋組織に直接触れさせない(筋変性・壊死を起こす)
  2. 筋組織の一箇所のみ結紮して糸を通して引っ張る
    • 鉛筆の芯の太さ程度(1〜1.5cm)採取する1)
  3. コルク⽚の上にトラガカントゴムを⽤いて垂直に⽴て,コルク⽚ごと凍結する
    • 検体はイソペンタンを冷却(-160度)して直接入れ,30秒で急速凍結する2)

HE 染色

  1. 個々の骨格筋細胞の大きさと形をみる(正常:ほぼ均一で,成人では直径 60〜80μmの角形)
  2. 筋核の極在性をみる(正常:筋細胞膜下に局在し,核数は 0〜3 個)
  3. 骨格筋細胞質の染色性をみる(正常:均一に染色)
  4. 骨格筋細胞内の異常構造物を見る(正常:ない)
筋径の大小不同主に筋原性.骨格筋細胞が形態的に円形化を呈する
肥大線維 hypertrophic fiber主に筋原性.100μm以上で有意と取る.
fiber splitting(肥大しすぎて亀裂が入る)も.
小径化hypotrophy非特異的
群衆萎縮 group atrophy 主に神経原性
小角化線維 small angular fiber 主に神経原性
Pyknotic nuclear clump
鎖状核 chained nuclei
非特異的;神経原性でも筋原性でも
壊死線維・再生線維単核細胞侵入が目立たなければ,壊死性ミオパチ─を示唆
再生線維では好塩基性の胞体,大型内在核となる
単核細胞侵入炎症性ミオパチ─を示唆

Gomori trichrome 変法染色

赤色ぼろ線維 Ragged-red fiberミトコンドリア病 etc
縁取り空胞 Rimmed vacuole封入体筋炎DMRV眼咽頭型筋ジストロフィー etc
Spheroid body
Cytoplasmic body
神経原性疾患 etc
Nemaline(端っこに糸屑)ネマリンミオパチー etc

ATPase 染色

NADH-TR 染色

  1. 筋原線維間網 (intermyofibrillar network) の観察
    • 正常の筋細胞質は均一に染色される = 乱れがない
  2. 筋細胞質の染色性は Type I > Type II (ATPase染色とは濃淡が逆!
  3. 筋疾患/神経原性疾患を問わずに乱れが生じる
    • 疾患特異性はないが,筋疾患では「乱れ」が強い
Target/Targetoid fiber神経原性変化で非特異的
筋細胞の中心が不染セントラルコア病

SDH 染色

CCO染色

PAS染色

Oil red O 染色

免疫組織染色

ジストロフィン Dystrophin細胞膜DMD(細胞膜は全く染まらない)
BMD(薄くまだらに細胞膜が染まる)
DMD保因者(細胞膜が染まる/染まらない筋細胞がまだら分布)
サルコグリカン Sarcoglycan細胞膜LGMD2C-F
ジスフェルリン Dysferlin細胞膜三好型,LGMD2B
カベオリン-3 Caveolin-3細胞膜LGMD1C
カルパイン-3 Calpain-3細胞LGMD2A
メロシン Merosin細胞膜/
エメリン Emerin/
1)
西野 一三.筋病理の基本.臨床神経 2011;51:669-676 J-Stage
2)
神経治療 37:278–282,2020 J-STAGE
3)
strongly SDH reactive vessels