目次
意味性認知症 SD
症状
診断基準
検査所見
意味性認知症 SD
bvFTD
,
PNFA
と共に前頭側頭型認知症(
FTD
)の一型
意味性認知症 SD
では
意味記憶が徐々に障害
されていく
たとえば「オタマジャクシの名前,形態,成長するとカエルになることがわかる」のが意味記憶が保たれている状態だが,進行に伴い以下のように欠落する
1)
オタマジャクシという名前が想起できなくなる
オタマジャクシと聞いても何のことかわからなくなる
実物や写真を見てもそれが何かわからなくなる
そこまで進行しても自発語の流暢性は保たれる(
進行性非流暢性失語 PNFA
との大きな違い)
意味そのものの脱落(
語義失語
)のため,語頭音ヒント(効果)も乏しくなる。
鉛筆を指し示しても「なんですか?」
「えんぴ…?」と聞くと「あ〜,“えんぴ” でしたか」
症状
進行性の言語障害(左半球)
内容に乏しい流暢性発話,迂遠で豊富な発話
語義失語
(与えられた語の音韻は受容されているが意味に結びつかず「
~って何ですか?
」と反問)
復唱は保存
されている
語性錯語 (「犬」と言いたいのに「猫」と言ってしまう)
表層性失読(「海老」⇒ かいろうと読む)
表層性失書(「正しい」⇒ 多シ,「切手」⇒ 気手と書く)
非言語の意味記憶障害(右半球)
※見てもわからない・聞いてもわからない
視知覚障害(熟知の相貌失認)
対象物の同定障害など
エピソード記憶は保たれる
原則65歳以下発症
と考えられ,指定難病も65歳以下でなければ受けられない
2)
背景病理の70〜80%は
TDP-43
とされている
cf.
PNFA
では多くが Tau(pick,CBD,PSP)
診断基準
以下の全てを満たすと臨床診断
3)
必須項目
4)
:
次の2つの中核症状の
両者
を満たし,それらにより日常生活が阻害されている。
物品呼称の障害
単語理解の障害
以下の4つのうち少なくとも3つを認める
対象物に対する知識の障害
5)
(特に低頻度/低親密性のもので顕著)
表層性失読・失書
6)
復唱は保たれる.流暢性の発語を呈する.
発話(文法や自発語)は保たれる
高齢で発症する例も存在するが、70歳以上で発症する例は稀である
画像検査:前方優位の側頭葉にMRI/CTでの萎縮がみられる
除外診断:AD,DLB,血管性認知症,PSP,CBD,うつ病など精神疾患
検査所見
形態的異常(CT/MRI):非対称性の
側頭葉
前部
の萎縮
機能的異常(SPECT):両側(片側優位)の
側頭葉
前部
の血流(代謝)低下
1)
認知症ガイドライン2017
2)
,
3)
難病情報センター 前頭側頭葉変性症(指定難病127)
4)
これらの障害に一貫性がみられる=異なる検査場面や日常生活でも同じ物品・単語に障害を示す
5)
富士山や金閣寺の写真を見せても,山や寺ということは理解できても特定の山や寺と認識できない。信号機を提示しても「信号機」と呼称ができず「見たことない」「青い電気がついとるな」。有名人や友人,たまにしか会わない親戚の顔が認識できない。それらを見ても「何も思い出せない」「知らない」と言ったりする。
6)
例:団子→“だんし”、三日月→“さんかづき”