目次

歩行の診察

歩容

ぶん回し歩行 Circumduction gait痙性片麻痺歩行.下肢を伸展させ,股関節を中心に円弧を描くように歩行する.足関節も伸展し,つま先が地面を引きずるようになる.なお「分回し」とはコンパスのように円弧を描く様のこと.歩隔は正常.
はさみ脚歩行
scissors gait
痙性対麻痺歩行.下肢は伸展・内転し,内反尖足で床をこすりながら,両足をハサミのように組み合わせて歩く.1)
鶏歩
Steppage gait
弛緩性の脱力のため足関節背屈が不十分になることで起きる歩容.遊脚期に足尖が上がらない(=下垂足:drop foot)ため,膝関節と股関節を大きく屈曲させて代償する.つま先を引きずったり,ぱたんぱたんと歩く.歩幅・歩隔は正常のことが多い.CMTなどの遺伝性ニューロパチーで認める.
尖足歩行
equinus gait
脳性麻痺などで尖足位で足関節が拘縮している患者で認める歩容.尖足位のまま接地し立脚する.脳卒中性片麻痺でも認めることがあるが,一般的にぶん回し歩行を伴う.
パーキンソン病様歩行
Parkinsonian gait
運動開始困難のため歩き始めの1歩が出にくい(gait freezing).歩幅は小さく小刻みに歩く(short-stepped gait).手の振りが少ない(初期には左右差がある).方向転換時,足の踏み替えが困難.視覚的な目印や,音(リズム)により,歩行のテンポが改善する
大臀筋歩行立脚期に体幹前屈位(股関節屈曲位)で姿勢を保持できないため,急激に腹部を前に突き出すようにして股関節を最大伸展させロックする歩容.
失調性歩行
ataxic gait
バランス不良で,リズミカルな歩行ができない.歩隔は広くなる.
Trenderenburg gaitトレンデレンブルグ歩行.股関節外転筋(主に中殿筋)の筋力低下による骨盤動揺性歩行.Abductor Lurch.患側の立脚期に,股関節を保持できずやや内転することで,遊脚側の骨盤が下降する.Duchenne は上記の代償のため体幹を立脚側へ側屈する独特の歩容を waddling gait と呼称した.Trenderenburg と Duchenne はそれぞれ違う観点に着目しているが,本質的には同様?2)
有痛性歩行
Antalgic gait
痛そうな歩き方.運動学的に固定された定義があるわけではないよう.
反張膝歩行
Back knee gait
立脚期に膝関節が過進展する.
伸び上がり歩行
vaulting gait
脚長差がある場合,短い方の下肢の立脚期に伸び上がりをする歩容.遊脚側の膝関節屈曲制限・尖足などによる機能的な脚長差(見かけ上の脚長差)がある場合にも同様に認めることがある.
1)
X脚(外反膝)で,両膝を擦り合わせるような歩容も鋏脚歩行ということがある.
2)
Douglas Lanska. The Relative Contributions of Duchenne and Trendelenburg to Description of Myopathic Gaits (S15.003). Neurology Apr 2016, 86 (16 Supplement) S15.003;