筋電図はハンマーの延長 ── by 園生雅弘
正常所見 | |
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voluntary MUP | 安静時とは言え大抵の場合すこし残ってしまう.上向き(陰性)の波.拮抗筋活動を促すことで消失する(Bicepsの検査中に,Tricepsに力を入れてもらうなど).これを Fib と間違えないことが極めて重要. regular でなく,若干のバラツキがある. semiregular .その点で Fib とは鑑別が可能. ラスター記録にするとわかる.慣れれば音でも違いがわかる. |
終板電位 | end-plate spike/potential. ちょっと針を動かした時に,バァ──っと不規則で高振幅な波形を認める.少し動かすだけで消える.形は単一で,単神経線維を示す.NMJにたまたま針先が当たると,アセチルコリンが大量に出て筋線維が不規則に大量発火する.放っておけば消える.正常所見. |
微小終板電位 | end-plate noise. 貝殻の音 sea shell murmur. end-plate spike になる前の所見. |
異常所見 | |
ミオトニー放電 | myotonic discharge.急降下爆撃音,エンジンサウンド.臨床的なミオトニアを伴う疾患でなくとも陽性になりうる.たとえば多発性筋炎や高K性周期性四肢麻痺でも陽性になる. 1) |
陽性鋭波 PSW | regularにタッタッタッタッタッタと音が聞こえながら下向き(陽性)の波を認める. acute denervation 所見とされるが,筋線維断裂を伴う筋疾患でも認める.原則一本の筋繊維はひとつの NMJ しか持たないため,断裂した筋線維の一方は必ず脱神経となる.IBMなどが好例。 |
線維自発電位 Fib | PSW と同じ意味をもつ所見.主に脱神経筋や筋線維断裂を伴う様な筋疾患で認める.発火頻度では 5-10 Hz 程度が多いが,最高で50Hz程度まである.PSWと同様に regular firing であることが重要. 掃引画面では,ゆらぎのない「一直線に並ぶ」電位が特徴的. |
線維束性電位 Fas | Fasciculation potentials. かなり不規則で,低頻度に認める.振幅は大きい.出る時は群集的に(クラスター的に)ババっと出る.他の神経原性疾患と比べても,特にALSで認め易い. |
複合反復電位 CRD | complex repetitivev discharge.ヘリコプターサウンド,マシンガンサウンドと呼ばれる. 複雑な一連の波形がずっと繰り返す.疾患特異性はないが,ALSではよく認める. |
ミオキミー放電 | myokimic discharge.臨床症状としてのミオキミアを筋電図で拾ったもの.放射線神経障害,Issacs症候群,ヘビ毒,金製剤などで認める |
衛星電位 | 軽収縮時などで,主要なMUPから一定の間隔で認める単一筋線維放電.初期陰性波 |
神経原性を示唆する所見 | 筋原性を示唆する所見 |
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late, reduced recruitment | normal 〜 early recruitment |
通常は 11 Hz を超えて単独 MUP が発火し続けることはない.伝導する軸索数が減少しており少ない MUP で発火頻度をあげて筋力を出力しようとしている証左となる.単一ないしごく少数のMUPの高頻度発火(= reduced recruitment).最も信頼性の高い神経原性の所見. | 個々の運動単位 MU に属する筋線維数が減少しているため,弱い収縮の段階から多数の MU を動員して筋力を出力する必要があるために起きる現象. 実際には特定の Hz などの基準があるわけではなく,検者の主観が入りやすい.確実な脱力筋においても reduced recruitment になっていないことや,干渉が保たれていること(near complete interference)のほうが客観性があり重要な所見. |
high Amp, long duration(thick) MUPs | low Amp, short duration(thin) MUPs |
いわゆる giant MUPs. 神経再支配所見とされる.MUPが大きければ大きいほど(20mVを超えるなどの場合),また polyphasic であると慢性経過らしい所見.神経再支配が完成していない段階では unstable, polyphasic MUPs2) を認める.ただし,high〜giant Amp に見えることはミオパチ─でもよくあり,鑑別に必ずしも有用ではない. | 典型的な筋疾患.MUPはたくさん出ているが,いずれも小さく,持続が短く,多相性 polypahsic。最大収縮時には干渉波形が見られる(near complete interference) .とはいえ実際には Ampは保たれることもある.重要なのは recruitment の方.この点は間違いやすいと言われるIBMとALSの鑑別でも重要. |