そのインタビュー動画の冒頭において,EBMの名付け親である Gordon Guyatt が興味深い事例を共有しながら The term “Contraindication” should be Contraindicated. と述べている.
ある80代後半の高齢女性が,心房細動による脳塞栓予防のため抗凝固薬を内服していたところ,消化管出血を起こして入院したという事例.多くの人はそのイベントによって「抗凝固薬」は以降禁止 contraindicated とするのがよいだろうと言った.しかしそれでもその女性は “intensely stroke-averse” で,“If I'm gonna die of a bleed, I'll die of a bleed. I do not want to have a stroke.”と明言したという.その発言を聞いて,臨床チームは短期の抗凝固薬中止後,また抗凝固薬を再開した.
また別のエピソードで,娘の誕生日パーティーを当日に控えた中年男性が初発の胸痛で病院を受診した.諸検査の結果その男性が低リスクだということはわかったが,一般診療ではリスクを鑑みて経過観察入院が推奨された.しかしその患者は娘の誕生日を優先したいという考えで,shared decision making を行い帰宅させた.その際米国の医学生は「念書もなしで帰すなんて…米国ではこうはいかんですわ(超意訳)」と言ったというオチつき.
これらはEBMの “values and preferences part” の事例として Gordon が紹介したものであり,その動画の中で “you know, you respect the patient's autonomy.” とも言っている
また,同じ動画の中で Paul Glasziou(Oxford大学のEBMセンターの元director)は片頭痛もちの女性に対するピル処方の例を提示している(14:05〜).
一般には「脳卒中リスクを上げるから禁忌だよ」と伝えたところ,その女性は「どのくらいリスクが上がるのですか?」と聞いてきたという.実際に調べてみると,確かにリスクを上げはするが,絶対リスクという観点では非常に低い患者層であることがわかった.そのことを伝えると彼女は “I will accept the raised risk.”と明言した.そこで Paul は大変躊躇しながらも処方したという(リスクを許容する旨などの署名はしてもらっていない).